骨描き こつがき

Kotsugaki

骨描き(こつがき)は、彩色に入る前に、墨で輪郭線を引く技法です。骨は輪郭線を指します。絵の骨格として、彩色の大切な手がかりになります。日本画制作の他に、陶芸制作の絵付けでも用いられる技法です。

日本画制作では、本画が和紙の場合、大下図(おおしたず)から本画(ほんが)に念紙(ねんし)を用いて転写した線を、骨描きします。また、本画が絹の場合、大下図の上に絹を重ねて透かして骨描きします。
骨描きは、単に線をなぞるのではなく、新たに描くような気持ちで作業することで生き生きした線が描けます。対象の質や形を確認しながら描きます。転写した線の全てを骨描きするのではなく、細部の線は転写した線のまま残したり、逆に線描が足りなければ加筆することも考えられます。また、制作途中で彩色を重ねることにより線が消えて見えにくくなれば、必要に応じて再び線描を重ねることもあります。
線には様々な種類がありますが、骨描きでよく描かれる線は「鉄線描(てっせんびょう)」です。鉄線描は、針金のように肥痩のない一定の太さの線で、引き締まった緊張感がある線です。筆跡がかすれないように、一定の速度で運筆(うんぴつ:筆づかいや筆の運び)します。筆は、削用筆(さくようふで)等の線描筆を用います。多くは墨(すみ)で描きますが、墨に朱や胡粉(ごふん)を少し加えることもあります。

輪郭線は描かずに彩色の濃淡で描く技法「没骨(もっこつ)」等、目的としている表現によっては、骨描きしないで彩色していくこともありますが、日本画の基本的な制作工程で重要な技法です。

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参考文献
・「日本画 表現と技法」 武蔵野美術大学日本画学科研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「人気作家に学ぶ日本画の技法 画材と技法」 同朋舎 1997年
・「図解 日本画用語事典」東京藝術大学大学院文化財保存学日本画研究室/編 東京美術 2007年

監修
重政啓治 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2009年06月20日作成