大下図 おおしたず

Oshitazu

大下図(おおしたず)は、本画制作に入る前に、描こうとするものを本画とは別に原寸大の画面にあたりなどで練る図をいいます。「大下絵」、「草稿」ともいいます。

日本画制作における大下図は、写生(デッサン)や小下図で練ったものを、本画とは別の支持体に構成や細部における関連性などを確認するものです。日本画の素材は、修正が難しいため、あらかじめ制作手順を考え、進行の問題を予測するために大下図を描きます。写生や小下図と違い、スケールが異なれば画面の見え方や印象も変化し、単に拡大コピーしただけでは造形的に物足りない部分が出てきます。そういった作業や修正の場のものでもあります。薄い和紙やトレーシングペーパーを用いてデッサンなどを写し画面上で移動させることで、構図や配置などの検討する工夫もあります。目的としているイメージに合うまで何度も修正し、最終的な構図を決定しましょう。

小下図を大下図へ写し取る方法は様々あり、一般的な方法としては、小下図に等間隔で縦横の線を引きマス目を描き、次に大下図にも同様の数のマス目を描くことで、それぞれのマス目を対応させながら描く方法や、コピー機で小下図を拡大コピーしたものを利用する方法などがあります。

目的としている表現によっては、大下図はあえて作成せず直接本画を描くこともあります。しかし、初心者は、日本画の基本的な制作手順の意味を理解する上でも、手順を追って制作することが重要です。

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参考文献
・「日本画 表現と技法」武蔵野美術大学日本画学科研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「和英対照 日本美術用語辞典(普及版)」東京美術 1998年
・「図版 日本画用語事典」東京藝術大学大学院文化財保存学日本画研究室/編 東京美術 2007年
・「人気作家に学ぶ日本画の技法 画材と技法」同朋舎 1997年
・「美と創作シリーズ 日本画を学ぶ」京都芸術大学/編 角川書店 1998年

監修
重政啓治 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2008年01月30日作成