鉄線描 てっせんびょう

Tessenbyo

鉄線描(てっせんびょう)は、鉄の針金のような線という意味で、肥痩のない一定の太さの硬い線です。日本画の線描の中でも代表的な線です。

日本画において「線」は、絵画の骨格であり重要な要素です。西洋画の陰影での表現に対して、日本画では対象の形を示す輪郭線による表現が主体です。毛筆で描く線は、太い、細い、長い、短い、鋭い、柔らかい、早い、遅い、かすれ、滲み、さまざまな表情が生まれます。
鉄線描は、彩色する前の骨描きによく用いられます。使用する筆は、穂先が利く削用筆(さくようふで)などの線描筆が適しています。筆に墨や絵具を含ませて、絵皿の縁で穂先を少ししごいて整えます。かすれがなく、ゆっくり一定の速度、一様な巾で運筆(うんぴつ:筆づかいや筆の運び)します。
古典作品の中で、鉄線描は仏画や肖像画等に多く用いられました。その代表的な遺例に法隆寺金堂の壁画があります。輪郭線を弁柄(べんがら)と思われる紅色で描かれた菩薩は、厳格な中にも優美さが表現されています。

日本画の線描には鉄線描の他に、抑揚のある「肥痩線(ひそうせん)」、細くてしなやかな「遊糸線(ゆうしせん)」、琴の弦のような細くて張りのある「琴弦線(きんげんせん)」などがあります。

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参考文献
・「日本画 表現と技法」 武蔵野美術大学日本画学科研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年

監修
重政啓治 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2009年06月27日作成