スクリーンプリント すくりーんぷりんと

Screen Printing

スクリーンプリントは、版画の孔版形式での代表的な版種のひとつです。木枠や金属枠にテトロンなど肌理の細かい繊維を張り、版として用います。製版では、繊維に乳剤などを用いて表現したい図像を残して地の部分を目止めします。刷りでは、図となる孔部からインクを押し出して、紙などの支持体に印刷するのがスクリーンプリントのシステムです。

スクリーンプリントは、正式名称をシルクスクリーン・プロセス・プリンティング(silkscreen process printing:英)と言い、シルクスクリーンやスクリーンプロセスなどと呼ばれることもあります。また、特に美術作品としての版画を指してセリグラフィ(serigraphie:仏)と呼ぶこともあります。
スクリーンプリントは、ステンシルや型紙を使用した染物に見られる技法などが起源だとされていますが、この技術自体の歴史は新しく、19世紀にヨーロッパでその技術が考案され、20世紀初頭にイギリスでスクリーン印刷技術として確立されることとなりました。この技術は、素材を問わずに大量印刷が可能であることから、商業媒体の分野で発展することとなりました。その後、美術作品の制作にもこの技術が用いられるようになり、徐々に現代アートの分野にも浸透することとなりました。
スクリーンプリントの版にあたるスクリーンの素材には、当初シルク(絹)が使われていましたが、現在ではテトロン(ポリエステル)やナイロンなどの化学繊維が主流となっています。スクリーンは均一な網目状になっており、目の細かいものほどシャープで繊細な表現が可能となります。スクリーンは印刷する支持体や使用するインク粘性、図柄の細かさなどにあわせて選択すると良いでしょう。
製版は、スクリーンに感光乳剤を塗布して感光させる写真製版法、原紙と呼ばれる紙をスクリーンに貼り付けるカッティング法、油性の描画剤でスクリーンへ描画した後にヒラーと呼ばれる水性の目止め液を塗布するブロッキング法があり、どの方法も非描画部分のスクリーンに目止めをすることで、インクの通過部分と非通過部分を作り出していきます。印刷の際には、版に油性もしくは水性のインクをのせ、スキージーを用いて描画部分の孔からインクを押し出して印刷します。インクは版を通過して支持体に印刷されるため、版から支持体に転写される他の版式とは異なり、図像が反転しないという特徴があります。また、印刷された支持体の表面はムラの無い均一な色面となります。

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参考文献
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年
・「版画の技法と表現」町田市立国際版画美術館/編 1987年
・「版画 進化する技法と表現」佐川美智子/監 岡部万穂/編 文遊社 2007年

監修
渡邊洋 通信教育課程油絵学科非常勤講師

作成日・改訂
2009年03月13日作成