隈取筆 くまどりふで

Kumadori Brush

隈取筆(くまどりふで)は、墨や絵具をぼかすために用いる筆です。
ぼかし筆とも呼ばれます。他の筆とは異なり、筆に直接絵具を付けることはありません。水を含ませた筆で、先に塗った画面上の絵具が乾かないうちに、ぼかすように使用します。

隈取筆は、中国南部特産の羊毛や、馬の夏毛、赤山馬と呼ばれる鹿毛を使って作られています。赤山馬は、長さが短く、強い弾力があります。ぼかし用の筆ですので、先のとがった他の筆とは異なり、穂が太く、丸みを帯びた形をしているのが特徴です。水をたっぷりと含み、スジが入ることなく美しくぼかすことができます。
また、ぼかしや濃淡を入れる日本画の表現技法のことを「隈取り(くまどり)」といいます。描いた線の片側をぼかす「片ぼかし(かたぼかし)」、描かれた対象の外側をぼかす「外隈(そとくま)」、下地より明るい色でぼかす「照隈(てりくま)」など、様々な隈取りがあり、立体感や形態の強調、装飾的効果があります。
隈取筆のない場合は、先の利かなくなった彩色筆でも代用できます。

使用後は水やぬるま湯でよく洗い、水分を切ります。乾いたタオル等の上に寝かせて、直射日光の当たらない風通しの良い場所で乾かしましょう。このときに筆立てに入れて穂先を上にして立てた状態にすると、根元に水分が溜まり筆を傷めてしまうので注意しましょう。
隈取筆は、日本画の材料を取り扱う画材店の他に、一般的な画材店で購入できます。

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参考文献
・「日本画 表現と技法」 武蔵野美術大学日本画学科研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「和英対照 日本美術用語辞典 普及版」 東京美術 1998年
・「新技法シリーズ 日本画の制作」 三谷十糸子/著  美術出版社 1975年
・「人気作家に学ぶ日本画の技法 画材と技法」 同朋舎 1997年

監修
重政啓治 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2009年02月10日作成