美濃紙ができるまで 9
9.紙漉き(かみすき)
9-1.紙を立てる
漉舟(すきぶね)と呼ばれる大きな風呂桶のような木製の水槽に、叩解した紙料と水を入れ、馬鍬(まぐわ)で漉舟の中の紙料をよく分散させます。次に黄蜀葵(とろろあおい)の根から抽出した粘液(「ねり」と呼ぶ)を適量入れ、竹の棒などでさらにかき混ぜ、ねりの量と強さを加減し調整します。ここまでの準備を「紙を立てる」といいます。
【 道具・材料解説 】
漉舟(すきぶね):紙を漉くときに用いる水を溜めておく木製(松や檜など)の水槽で、この中に水を張り、紙料や黄蜀葵の液を加えて漉きます。漉舟のサイズは各地方や種類により様々です。ちなみに、この美濃竹紙工房では横幅約171cm、奥行き約98cm、深さ約35cmの内寸を持つ漉舟が使用されていました
馬鍬(まぐわ):漉舟に入れた紙料と黄蜀葵から抽出した粘液の作用で、水の中で均一に分散するように掻き混ぜるための道具です。大きさは漉舟の横幅程度あり、大きな櫛(くし)、又は鍬のような形状をしています。使用時は、漉舟の両端にある馬鍬かけと呼ばれる支柱に掛け、前後に300回程揺らしながら使用します
黄蜀葵(とろろあおい):アオイ科の1年草。高さは1〜2メートル程度になり夏に10〜20センチ程度の黄色い花が咲き、根には独特の粘りのある透明な粘液を含みます。紙を漉くときに、紙料と一緒にこの粘液を水に添加することにより、紙料が固まりにならずほど良く分散し、さらに沈殿も防げることから、漉きやすくなります。美濃では別名「ねべし」といい、抽出した粘液を「ねり」といいます。
紙料箱(しりょうばこ):叩解し終えた紙料を保管するための箱。紙漉きするときに、この箱から適量の紙料を取り出し、漉舟の水に加えていきます。