海綿 かいめん

Sponge

海綿は、主に水彩画制作の際に、筆先や描画した部分の水分などの調整、また、筆では描けない様々な表現効果を生み出す描画材として用いる天然スポンジです。

海綿は、水中に生息する無脊椎動物の一種で、画材用としては、モクヨク海綿を原料とします。乾燥させることで、柔らかく弾力がある多孔質な繊維状の骨格のみになり、大変吸水性のある特性を持ちます。大きさや形態は、自然物なので定まっていませんが、市販品はある程度のサイズで分類して販売されています。また、表面の肌理(キメ)の具合により、細目(シルク)と荒目(ウール)などの種類があります。ちなみに、代用として安価な石油合成によるスポンジなどもありますが、柔らかな使用感や肌理細かさ、吸水性などは大きく異なります。

海綿の主な利用方法としては、画面上に水彩絵具を塗布し水分を含んでいる間に、乾いた海綿により、余分な絵具や水分を吸わせて取り除いたり、塗布した色面の輪郭をぼかしたり、紙の白色を浮き上がらせハイライトや塗りムラなどの効果を作ることができます。一方、海綿は刷毛などの描画材のような使い方もできます。水彩絵具を筆跡を残すことなく、画面に均一に塗る「ウォッシュ」という技法で、たっぷりの水で絵具を溶いて伸びをよくし、それを海綿に含ませることで、広い面を容易に着彩することができます。また、乾いた海綿に濃いめの絵具を直接つけて、軽くたたくことで、砂目のような描画効果を生みます。さらに、海綿を指先でつぶすなどして変形させることで、筆では出せない変化のある描線などが引けます。

取り扱いの注意として、海綿を使用する際は、紙に強くこすりつけたり、叩いたりすると、紙が傷ついたり表面が荒れる恐れがありますので、注意しましょう。また、使用後は、しっかりと水で洗浄し、絵具などの汚れを取り去りましょう
海綿は、一般的な画材店で購入できます。

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参考文献
・「水彩 新しい画材ガイド」美術手帖増刊号編集部編/編 美術出版社 1994年
・「絵画技術全書」クルト・ヴェールテ著 美術出版社
・「図画工作・美術科 重要用語300の基礎知識」若元澄男/編著 明治図書 2000年
・「絵画材料事典」R・J・ゲッテンス・G・L・スタウト/著 森田恒之/訳 美術出版社 1999年
・「日本大百科全書」小学館 1994年

監修
堀内貞明 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2009年04月21日作成

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  • 海綿海綿
  • スポンジスポンジ
  • 使用例(ワトソン紙)筆先の水分調整筆先の水分調整
  • 色をぬく、ぼかす色をぬく、ぼかす
  • 絵具を均一に塗る絵具を均一に塗る
  • 砂目のような効果で塗る砂目のような効果で塗る

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