ベクターデータ べくたーでーた

Vector Data

ベクター(ベクトル)形式のデータとは、2次元以上の座標空間に座標と形状属性の関数として図形を記述するもので、主にドロー系(例:アドビシステムズ社のIllustratorや、フリーソフトのInkscapeなど)やCAD系と呼ばれるアプリケーションで用いられます。

その特徴は、図形の性質を利用した作図や編集(スプライン補間、パラメトリック変形、接円弧処理や交点計算など)が可能なことや、原理的には実寸法での数値指定が可能(実際にはアプリケーションの実装に依存します)であり、編集の過程で図形や字形の情報が劣化することなく保持されるので、その情報を造型や加工、或いは積算などの下流工程で利用することも可能です。

ベクター形式のデータはスクリーンやプリンタ、イメージセッタで描画する都度、出力デバイス毎の解像度にあわせてラスタ化(RIP:RasterImage Processing)されるので、サイズや倍率に関わらず高品位な描画出力が得られることが最大の特徴です。デメリットとしては、描画品質を出力デバイスに依存しているため、RIPの処理能力や描画情報の解釈の違いによって意図しない結果を生む可能性があることです。アプリケーションのバージョンアップや出力デバイスの変更ではテスト出力を怠らないことが重要ですが、それにも増して(フォントデータをアウトライン化するなど)取り扱い易いデータに変換することなども必要です。情報交換という観点からは、ファイル形式が概ね非公開かつアプリケーション依存であるため、上流工程に追従した環境構築を余儀なくされたり、過去情報の有効活用を考慮すると一旦採用したアプリケーションを変更し難いことなどが挙げられます。データサイズは作図ボリュームとの相関が希薄なので推定は困難といえます。尚、ベクター系ページ記述言語としてはアドビシステムズ社のPostScriptが知られていますが、ドロー系アプリケーションの多くはこの形式の出力に対応しています。CAD系アプリケーションでは大判プリンタやプロッタ向けにHP-GL、CAM向けにExcellon、レーザ作画装置向けにGerber(RS-274D, RS-274X)など、幾つもの専用ベクター形式が用いられています。

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参考文献
・「マルチメディア」佐藤淳一/著 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「ディジタルイメージクリエーション デザイン編CG」デジタルイメージクリエイション編集委員会/編 CG-ARTS協会 2001年
・「コンピュータグラフィックス」コンピュータグラフィックス編集委員会/編 CG-ARTS協会 2004年
・「デジタル映像制作ガイドブック」デジタル映像制作ガイドブックプロジェクト/著 株式会社ワークスコーポレーション 2004年
・「DTP&印刷しくみ事典」ワークスコーポレーション エデュケーション編集部/編 株式会社ワークスコーポレーション 2005年

参考ウェブサイト
アドビシステムズ
「Inkscape」フリーソフトウェア

監修
堀越洋一郎 通信教育課程デザイン情報学科教授

作成日・改訂
2008年01月21日作成