雁皮紙 がんぴし
Ganpishi
雁皮紙(がんぴし)は、薄い半透明の和紙で、銅版画や木口木版で多く利用されています。
主にジンチョウゲ科の植物である雁皮の靭皮(じんぴ)繊維から作られています。紙肌は滑らかで光沢があり、その薄さにも関わらず水に濡れた状態でも非常に高い強度を保ちます。長期間の保存に対して虫食いが少なく、変色が少ないことも特長です。色は自然なクリーム色が一般的ですが、赤や茶、水色や橙色などに染められた色雁皮の種類も豊富です。雁皮紙の有名な産地としては、土佐、美濃、名塩、五箇山(ごかやま)などが挙げられます。
雁皮は栽培が困難で野生のものに頼らざるを得ません。製作工程においては、節が多く塵を取る作業にとても手間がかかり、また繊維が細いため厚く漉(す)くことが難しく、ごくわずかしか生産できません。現在は手漉きのものと機械漉きによるロール状のものとがありますが、共に値段は高価です。
銅版画で使用する場合は、版と同じ大きさにカットした雁皮紙を、インクを詰めた版の上に乗せ、薄い糊を塗り、版画用紙を乗せてプレス機に通します。すると、雁皮紙にイメージが刷られると同時に版画用紙に雁皮紙が定着します。その結果、画面の中だけに雁皮紙の美しい色合い、肌合いを得ることができ、非常に効果的です。これを「雁皮刷り」といいます。この刷りは、通常の版画用紙のみの刷りと比べてインクの刷り取りが良いので、アクアチントやメゾチント等によるデリケートな階調を持つ作品にも頻繁に使われます。木口木版では、バレンやスプーン等で雁皮紙にイメージを刷ってから、厚みを持った紙で裏打ちします。また、リトグラフや板目木版、スクリーンプリントにも使用できます。
いずれの版種に使用する場合も、つるつるした表側にインクが付くようにします。
雁皮紙は和紙専門店で購入できます。また、種類は限られますが、雁皮紙を取り扱っている画材店もあります。
※描画例(写真)は、用紙の特性や表現の可能性を示すためのテストサンプルであり、特定の描画材の使用を薦めているものではありません。(一般的には適していないとされる描画材もあえて使用しています。)
関連科目
参考文献
・「版画」武蔵野美術大学版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画の技法と表現 改訂版」町田市立国際版画美術館 2003年
・「紙の大百科」美術出版社 2001年
参考ウェブサイト
・「2002-2006年 造形ファイル」 武蔵野美術大学
監修
永井研治 通信教育課程油絵学科教授
作成日・改訂
2008年03月21日作成