駒透 こますき
Komasuki
分類
駒透(こますき)は、版画の板目木版において、版面を彫るために使用される彫刻刀のひとつで、刃の断面が半円の形をした丸刀の中で、特に刃の幅が狭いものを駒透と呼びます。
駒透は、一般的に丸刀の刃幅の大きさが6mm程度までのものを指し、板目木版の彫りにおいてよく使用される、比較的扱いやすい彫刻刀のひとつです。駒透は1mm、1.5mm、2mm、3mm、4.5mm、6mmといった刃幅の種類があります。
版面を彫る場合には、まず切り出し刀(版木刀)で版として必要な部分(描画部)と不要な部分(非描画部)の境界線に切り込みを入れた後、その周りをさらうために駒透を使用します。この作業を、駒透を入れるという言い方をする場合もあります。また、必要な部分が細かく狭い場合や、描画部を曲線的に彫りたい場合などには、駒透で直接彫り進めることも可能です。駒透は、鋭くシャープな線を彫ることができる切り出し刀や三角刀と比べて、彫った線のはじめと終わりが丸くなるために、彫った部分の摺りあがりが柔らかく暖かい印象になるのが特徴です。駒透の刃は、断面が半円状になっているため、三角刀と同様に力の入れ加減や版面に刃を入れる深さを工夫し、細い線から幅の太い線まで、さまざまな種類の線を彫ることが可能です。
駒透はその刃の形状から、版を彫り進めていくと刃こぼれをすることが多くあるために、常に鋭い切れ味を保つためには、こまめに刃を研ぐ必要があります。駒透の刃を研ぐ場合には、砥石を刃と垂直に置き、刃の傾斜に合わせ円弧を描くように左右に動かします。その時彫刻刀も回すように動かして刃の全体を研ぐようにします。また刃の半円の深い駒透の場合には無限大(8を横向きにした形)を描くように研ぎましょう。研いだ後には、ウエスで水分をよく拭き取ってから使用します。また長く使用しない場合には、サビ防止のために機械油を染み込ませたウエスで拭いておきましょう。
駒透は、刃物の専門店や版画材料を扱う画材店で購入することができます。
関連科目
参考文献
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年
監修
塙太久馬 通信教育課程油絵学科非常勤講師
作成日・改訂
2008年11月07日作成