鳥の子紙 とりのこし

Torinoko Paper

鳥の子紙は、主に雁皮(がんぴ)を原料とし、光沢があり滑らかで緻密な肌合を持った手漉きの和紙です。日本画の支持体や板目木版の版画用紙、書画の料紙(りょうし)、襖紙(ふすまがみ)などとして利用されています。

鳥の子紙の主な産地として越前(現:福井県今立)で古くから作られ、紙色が淡く黄色味を帯び、滑らかな肌合が鶏卵を連想させることから「鳥の子」という名称がついています。
紙肌は、ほぼ平滑で日本画などの描画の際は筆運びがよく、適度な厚みと柔軟性があり、絵具の発色も良好です。原料である雁皮は、ジンチョウゲ科の落葉低木で、繊維が短く細いことから、肌理(きめ)が細かく緊密な紙を作ることができます。また、害虫にも強く、高い保存性があります。ただし、栽培が難しく供給量が少ないためやや高価な紙として販売されています。

本来、鳥の子紙は雁皮を原料としたものですが、それ以外の原料を用いたものもあります。紙の強度を上げたり光沢を抑えるために同じジンチョウゲ科の三椏(みつまた)を使用したものや、価格を抑えるために木材パルプを使用したものなど様々な種類があります。ちなみに原料の違いや混合比により、特号(雁皮のみ)、1号(雁皮と三椏の混合)、2号(三椏のみ)、3号(三椏と木材パルプの混合)、4号などに分けられています。サイズについては、特号は三六判が一般的ですが、その他の号数のものは三六判以外にも、さらに大きな四六判、五七判、六八判、七九判などがあります。

鳥の子紙は、その風合いや保存性の高さにより、これまで数多くの襖や絵巻物に使用されてきました。江戸時代の図解入り百科事典である「和漢三才図会(わかんさんさいずえ)」においても「紙王」と評しているように、古来より良紙とされています。

取り扱いの注意として、紙の裏表は、紙肌が滑らかな面が表側で、ザラつきのある面が裏側になります。また、板目木版による刷りで使用する場合は、あらかじめ湿らせたボール紙や新聞紙に鳥の子紙を挟み込み、適度に湿らせてから使用しましょう。さらに市販されている紙には、礬水引き(滲み止め)が施されているものもありますので、確認の上購入しましょう。
鳥の子紙は、画材店や和紙専門店で購入できます。

※描画例(写真)は、用紙の特性や表現の可能性を示すためのテストサンプルであり、特定の描画材の使用を薦めているものではありません。(一般的には適していないとされる描画材もあえて使用しています。)

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関連科目

参考文献
・「日本画 表現と技法」武蔵野美術大学日本画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画」武蔵野美術大学版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「画材と技法」見聞社/編 林功・箱崎睦昌/監 同朋舎出版 1997年
・「日本画の表現技法」石踊紘一・高嵜三朗/著 美術出版社 1978年
・「日本画用語辞典」東京藝術大学大学院文化財保存学日本画研究室/編 東京美術 2007年
・「彩 ウエマツ日本画総合カタログ」ウエマツ画材店

参考ウェブサイト
「越前和紙」福井県和紙工業協同組合

監修
重政啓治 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2008年09月10日作成

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  • 鳥の子紙特号における描画例

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