ハコビ はこび

Hakobi

ハコビ(運び)は、版画の板目水性木版の摺りにおいて、絵具を溶く際や溶いた絵具を版上に運ぶ際に使用する、竹皮を細く裂いて棒に巻きつけた箒(ほうき)のような形状をした道具です。ハコビは浮世絵の時代から使われており、摺り師が自製していたそうです。溶き棒とも呼ばれる場合があります。

ハコビは、裂いた竹皮部分に絵具を含ませて、版の上に絵具を運びます。ハコビを使うと、箒状に裂かれた竹皮の繊維に筆よりも多くの絵具を多く含むことできるため、大変に便利です。使用後のハコビは、絵具や糊を洗い落とし、しっかりと乾燥させましょう。ハコビは軸を短く切った太い筆などで代用することができます。
ハコビを自製する場合には、竹皮と竹串や割箸などの棒、糸を用意します。ハコビに用いる竹皮は、なるべく根元に近い硬い部分のものを使用します。バレンを包んだ残りの竹皮を使用すると良いでしょう。竹皮は幅が5cm、丈が10cm程度のものが3枚ほどあれば十分です。
はじめに竹皮は、ぬるま湯に7分程浸けておきます。ぬるま湯に浸した竹皮は、内側の根元から2cm程に繊維と垂直にカッターで切り込みを入れ、この切り込みを折り曲げて甘皮を剥ぎ取ります。甘皮を剥いだ竹皮は、繊維が棒と平行になるように巻きつけ、糸でしっかりと縛って固定します。竹皮は先端が棒から3~4cm出るくらいに切り落とし、針や画鋲などを用いて、繊維にそって細かく裂いてほうき状にします。竹皮の先端が細かくなるほど、絵具を多く含むことが可能です。この裂く作業には、木片に木綿針を5、6本挟んで櫛状にして固定した裂き櫛と呼ばれる道具を使用すると作業が捗ります。
竹皮の薄い部分を使用してハコビを作る場合には、甘皮を剥ぐことが困難なために甘皮を剥がさずに棒に巻きつけて糸で固定してからぬるま湯に浸し、木槌で竹皮の先端を叩きます。この作業を行うことで、叩かれた竹皮の甘皮がボロボロと剥がれて繊維をほぐすことができます。
ハコビは版画用品が置いてある画材店でも購入することができます。

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参考文献
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画 進化する技法と表現」佐川美智子/監 岡部万穂/編 文遊社 2007年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年

監修
塙太久馬 通信教育課程油絵学科非常勤講師

作成日・改訂
2008年11月25日作成