サイン・エディション さいん・えでぃしょん
Signatures and Editions
分類
サインは、版画作品においてその作品のオリジナル性を保証するために、作者が完成後に署名するもので、エディションは作者が定める限定部数のことをいい、その限定部数を保証するために作者が完成した作品の余白部分にエディション・ナンバーを記入します。これをサインドアンドナンバード(signed and numbered)と呼びます。
19世紀以前までの版画作品では、署名や限定部数を記入するという習慣はありませんでしたが、19世紀末の欧州において刷り師が余分に印刷し販売することを防ぐ目的と、作家自身が制作したという証明を求められることが多くなったことから、サインを記入する習慣が浸透していきました。その後、この習慣は広く一般化し、日本でも1920年代の版画作品でサインが記入されたものを見ることができます。また1960年にはウィーン・第三回国際造形芸術会議において「オリジナル版画と認められるためには、署名だけではなく、限定部数と一連番号が付けられなければならない」と宣言されたことによって、サインの他にエディション・ナンバーが記されることとなり、その後の版画の商業的流通の過程の中で現在の形式が確立したと考えられています。
一般的にサインとエディションは、イメージ(画面)下の余白(マルジュ)部分に鉛筆などを使用して右側にサイン、左側にエディションを記入します。サインは書き込む字体、書体を統一したものを条件として記入します。エディションは分子/分母の形式で記入し、分母に印刷した限定部数、分子にその限定部数のうち何番目の作品かを記します。分子に記す番号は印刷した順番とは異なっても構いませんが、すべての作品の印刷の状態・質などが同じ条件であることが必要です。また、限定部数ではなく、Artist’s Proof(A.P.)やState Proofなどと表記されたものがありますが、これらは限定部数以外に印刷されたものを示し、それぞれに意味があります。Artist’s Proof(A.P.)は作者保有用を意味し、限定部数の10%程度までを限度としています。State Proofは試刷りの段階刷り用で、最初の試刷りは、1st state(英)1ere état(仏)、次は2nd state(英)2e état(仏)のように表示します。
関連科目
参考文献
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年
・「事典プリンツ21」 室伏哲郎/著 プリンツ21 1997年
監修
永井研治 通信教育課程油絵学科教授
作成日・改訂
2008年11月07日作成