水張り みずばり

Water Tensioning

水張り(みずばり)は、紙を水で湿らせると膨張し、乾くと元のサイズに収縮するという性質を利用し木製パネルなどに張り込む方法のことです。これにより水性系の描画材(水彩画・日本画など)を用いて描く際、水分による紙面の波打ちやたるみを抑えることができ、鉛筆デッサンの際なども、木製パネルと紙がしっかりと固定され描きやすい描画面をつくることができます。

水張りの方法には「パネル張り」と「平張り」があります。「パネル張り」は、木製パネルサイズより一回り大きな紙を、パネル表面を覆うように張り込む方法で、パネル全体を描画面とすることができます。この際、一般的なパネル張りでは、水張りテープを用いて紙を固定しますが、日本画制作での和紙のパネル張りでは、テープの代わりにでんぷん糊を直接パネル側面に塗って固定します。また、「平張り(ひらばり)」は、パネルより小さいサイズの紙を、パネルの表面にフラットな状態で水張りテープで張り込む方法で、木製パネルの代用に合板を使用する場合や、パネル上に複数枚を同時に張り込むことができます。

作業上の注意として、「パネル張り」で新品の木製パネルを用いる場合、木材に糊が浸透し接着力が低下するのを防ぐため、事前に木製パネルの側面に糊を塗り乾かす「捨て糊(すてのり)」という作業を施すことで皮膜をつくります。水張りの際に用いる刷毛は、彩色や他の用途などに使用してないきれいなものか、水刷毛(みずばけ)のような専用の用途のものを使いましょう。また、パネル張り用に紙を購入する場合は、必ずパネルサイズよりも大きなサイズの紙を選びましょう。

制作後に木製パネルから紙を剥がす場合は、側面の一箇所に∨型にカッターで切れ目を入れ、そこからパネルと紙の隙間にカッターの刃を差し込んで、切り離します。日本画制作では、その後の処理法で紙の剥がし方が変わります。
水張りした状態で長期間の作品保存する場合は、パネル合板の木材の酸化、時間経過や湿度によるアクの発生などで作品に影響をあたえる恐れがありますので、木製パネルの表面に紙(新鳥の子紙等)を糊付けする下張りなどを施すと良いでしょう。

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参考文献
・「日本画 表現と技法」武蔵野美術大学日本画学科研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年

参考ウェブサイト
「2002-2006年 造形ファイル」 武蔵野美術大学

監修
重政啓治 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2009年07月04日作成

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