石版石 せきはんせき

Stone Plate

石版石は、リトグラフの版材として使われる天然の石灰岩で、板状に四角く切り出された形態が一般的です。版となる面を金剛砂などで平らに研磨して使用します。石の主な主成分は炭酸カルシウム(94~98%)で、他に酸化鉄、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、その他の鉱物などを少量含有しています。また、石は天然の砂目を持つ多孔質で緻密な表面を持っています。石は描画した後の製版により、描画した部分は脂肪酸カルシウムに変化し親油部となり、描画していない部分は粘液酸の保水性のある膜で覆われ親水部になります。石の色はその形成時代や成分の比率により異なり、古い時代の暗青色から、灰青色、灰色、淡黄色、白色と変化し、硬度も硬から軟へと変化します。硬い石ほど酸に対して強く、描画が壊れにくく、軟らかいほど酸に弱く脂肪感度は高くなります。石の産地は様々存在しますが、南ドイツのゾルンホーフェン産のものが最も良質とされています。

リトグラフが石版画と呼ばれるように、石版石は1798年にゼネフェルダーによって平版印刷が発明されて以来、長期にわたって使用されていますが、重量、材質の不均衡、経済性、印刷能率などの不利な面が多く、また入手が困難なため、現在、日本では金属板が使用されることが多くなっています。しかし、石版石はトーンの表現力やスクラッチなどの技法、また修正を繰り返しながらの制作が可能なため、金属板にはない特性や技法が魅力になっています。

石版石は、表面を研磨することで繰り返し使うことができます。また、石の厚さが薄くなってきた場合は、石版石やコンクリートなどで裏打ちをして補強します。リトグラフ用品を扱う専門店にて入手できます。

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参考文献
・「版画」武蔵野美術大学版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画の技法と表現 改訂版」町田市立国際版画美術館 2003年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年

参考ウェブサイト
「2002-2006年 造形ファイル」 武蔵野美術大学

監修
永井研治 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2007年09月10日作成