洋紙 ようし

Yoshi (Western Paper)

洋紙とは、国産の和紙に対し西洋より伝来・輸入した紙を指すとともに、機械漉きにより生産している紙の総称でもあります。造形の分野では、画用紙、ケント紙、水彩紙、木炭紙、版画用紙の大半が洋紙であり、多くの表現素材として使用されています。

洋紙の主な原料には、比較的安価で入手が容易な木材パルプをはじめ、綿、亜麻、エスパルトなどの非木材パルプなどが用いられ、特に綿100%のものは高級な水彩紙や版画用紙に利用されています。また、多くの洋紙にはにじみ止めにサイジング処理が施されます。以前はこのサイズ剤が酸性であったため繊維が傷み、100年足らずで紙が劣化してしまいました。現在は改良が進み中性や弱アルカリ性のサイズ剤が使用されています。洋紙の紙肌(表面の凹凸)には、使用目的に合わせた様々なテクスチャー加工(ストライプ状や蜂の巣状など)が施されたものや、荒目、中目、細目と言った肌理の粗さに差をつけたものがあります。ちなみに輸入紙では紙肌の違いを、ラフ(荒目:表面加工なし)、コールドプレスまたはノット(中目:金属板でプレスし若干平滑に加工)、ホットプレス(細目:加熱した金属板でプレスし平滑に加工)と呼ぶこともあります。その他に、紙の耳(デクルエッジ)と呼ばれる紙の端辺の形状や厚さが不均一になっている部分を裁断せずに残したものや、ウォーターマークと呼ばれる透かし模様やロゴが入ったもの、染料や顔料などにより色付けしたものなど、様々な特徴を持った洋紙があります。

洋紙が普及する変遷としては、後漢時代に中国の蔡倫(さいりん)により手漉きによる製法が大成され、その後朝鮮半島を経て日本に伝わる一方で中央アジアや中東などを経てヨーロッパへと伝播します。13~14世紀にはイタリアのファブリアーノやフランスのアルシュなど各地で製紙業が盛んになります。当時は麻やボロ布を細かく裁断したものを原料に製造していましたが、19世紀頃には大量生産のため機械漉き技術が進み、原料も砕木パルプや化学パルプが使用されるようになります。日本では明治時代、近代化の過程で紙の需要が高まり、西洋からの輸入が増大していきます。その際、これまで国内で作られてきた紙(和紙)に対し、輸入される紙を西洋紙や洋紙と呼びました。また、国内でも西洋の機械漉きが導入され和製洋紙の製造が始まり、今日ではこの製紙法が普及し日常的に使用する紙として広く利用されています。

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参考文献
・「画材の博物誌」森田恒之/著 中央公論美術出版 1994年
・「洋紙と用紙」金児宰/著 光陽出版社 1997年
・「紙の大百科」美術出版社 2001年
・「紙の文化事典」尾鍋史彦・伊部京子・松倉紀男/編 朝倉書店 2006年
・「DVD-ROM版 スーパー・ニッポニカ Professional」小学館 2004年

参考ウェブサイト
「2002-2006年 造形ファイル」 武蔵野美術大学
株式会社ミューズ
マルマン株式会社
ファブリアーノ社
アルジョウィギンス社
キャンソン社

監修
堀内貞明 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2008年08月21日作成