内見当・外見当 うちけんとう・そとけんとう
Uchi Kento & Soto Kento
内見当・外見当は、板目木版の制作において、摺りの際に紙の置く位置を決める見当のことで、版木の内部に彫られた見当を使用する方法を内見当と呼び、版木とは別の木板に見当を彫り込んだ、見当板と呼ばれるものを使用する方法を外見当と呼びます。
木版画で内見当を使用した摺りを行う場合には、作品のイメージサイズと余白(マルジュ)分以上の大きな版木を用意する必要があります。そのために、余白を大きくとりたい場合には、あまりこの方法は適しません。多版多色で作品を制作する場合には、全ての版に見当を彫り込む必要がありますが、見当自体を同じ木板の中に彫り込むために、見当が動く心配がなく、外見当を使用した場合よりも見当の精度が高いと言われています。
外見当を使用する場合には、版木とは別の木板に見当を彫り込んだものを使用します。この外見当に使用する木板を見当板と呼びます。見当板は版木と同じ厚さのL字型に切り出したもの使用し、摺る際にはL字の内角に版木の角をしっかり収めて使用します。外見当は、多版の場合でも全ての版に見当を彫り込む必要がないために、手間が掛からないという利点があります。しかし、摺りの際に見当板のL字の内角に版木がしっかり収まっていない場合、摺りあがった作品がずれてしまうことあるため注意が必要です。
どちらの見当も通常、版木の右下部にカギ見当と呼ばれるカギ型の見当を付け、中央よりの左下部に引きつけ見当と呼ばれる一文字型の見当の印を付けます。どちらも見当ノミと呼ばれる刃物で切り込みを入れ、平刀などで紙一枚分が引っかかる程度に彫り込みます。摺りの際には、両手で紙を挟み持ち右手で挟んだ紙をカギ見当に引っ掛け、左側の手に挟んだ紙を引きつけ見当に引っ掛けて位置を固定し、紙を版面にそっと落として置きます。この時、外見当の場合には、余白の汚れなどの原因となるために紙を置いた後、外見当を抜いてから摺るように心がけなければなりません。
このような多色木版の見当は1700年代の中盤から後半に完成されたと言われ、これが多色木版画の技術向上となり、後の木版画による浮世絵(錦絵)の隆盛に繋がったとされています。
関連科目
参考文献
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年
・「版画 進化する技法と表現」佐川美智子/監 岡部万穂/編 文遊社 2007年
・「版画の技法と表現」町田市立国際版画美術館/編 1987年
監修
塙太久馬 通信教育課程油絵学科非常勤講師
作成日・改訂
2009年03月17日作成