見当 けんとう
Registration Marks
見当は、版画の印刷の際に、紙を版に対して正確な位置に置くために版面に付ける印のことをいいます。特に多版を使用した作品を制作する場合に見当は欠かせないものであり、その精度次第で作品の出来上がりを左右する重要なものです。
見当は、日本の版画文化において重要な役目を果たしました。浮世絵版画では当初、墨摺絵と呼ばれる墨色(黒)一色による作品が主流でしたが、1700年代に入ると複数版による多色作品を制作する動きが出てきました。このため版による色ズレを防ぐことが必要となり、1700年代の中盤から後半に見当の技術が完成したとされています。このことが後に色彩豊かな錦絵を生みだすきっかけとなり、浮世絵の隆盛に繋がったとされています。
見当は、版種によって記し方、付け方の方法は様々です。木版画では、「L」字に彫り込む『カギ見当』と「―」字に彫り込む『引き付け見当』と呼ばれるものを使用し、この彫り込んだ見当に紙を引っ掛けて位置を定めることで、紙を適正な位置に置きます。これらの見当を版木の中に彫り込む場合には『内見当』と呼ばれ、版木とは別の木板に見当を彫り込んだ見当板と呼ばれるものを使用する場合には『外見当』と呼ばれます。
リトグラフでは、T字見当と呼ばれる、版面に「T」字を刻み付け、紙の裏に記した右側の縦線とT字が十字になるように合わせて版に紙を適切に置く方法が一般的ですが、紙が印刷する版よりも大きい場合には、版面の二ヵ所に十字(トンボ)を書き入れ、紙の裏側から刺した針を十字の中心に合わせて紙を置く『針見当』があります。銅版画でもこの針見当が使われる場合もありますが、クリアフィルムなどに版と紙の置く位置を書き込んだものをプレス機のベッドプレートに敷いて見当とする方法が一般的です。
スクリーンプリントの多版による制作の場合には、製版の際に作品と共にトンボと呼ばれる十字を全ての版の同じ位置に焼き付けて製版します。印刷時には、まず見当用として紙にトンボを含んだ版を一枚印刷し、本刷りはトンボをマスキングテープで塞いで行います。次の版を刷り始める際には、クリアフィルムにトンボを含んだ版を印刷し、このフィルムと見当用に刷った紙のトンボを重ね合わすことで、前の版と正しく重なる位置を求めます(トンボ見当)。紙を置く位置には、ボール紙に両面テープを貼ったものを、刷り台の上に貼り付けます(紙見当)。
関連科目
参考文献
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年
・「版画の技法と表現」町田市立国際版画美術館/編 1987年
・「版画 進化する技法と表現」佐川美智子/監 岡部万穂/編 文遊社 2007年
監修
永井研治 通信教育課程油絵学科教授
作成日・改訂
2009年04月28日作成