金剛砂 こんごうしゃ
Emery
金剛砂は、石版石を用いたリトグラフ制作において、石の表面(版面)を研磨する際に使用するガーネット(ザクロ石)を粒状にした研磨材です。
金剛砂は、ケイ酸塩と呼ばれるマグネシウムや鉄、マンガン、カルシウムなどを含む化合物で構成された薄い茶褐色の天然鉱物です。大粒なものは宝石、飾石として用いられますが、硬度が高く鉱物の中では比較的安価であることから、そのほとんどは研磨材として用いられ、紙やすりの研磨剤やコンプレッサーでガラスに吹き付けて図柄を印刻するサンドブラストの研磨剤として使用されています。金剛砂の粒子の大きさ(粒度)は規格によって決められています。粒度は、一般的に数字の前に#をつけて表記され、この番数が低いほど粒子が粗く大きく、番数が高いほど粒子が細かく小さくなります。
版画おいて金剛砂は、石版石の研磨の際に用いられます。リトグラフで版材に石版石を使用する場合には、まず石版石の表面を研磨する必要があります。研磨は、使用する石版石の表面に研磨剤として金剛砂を振りかけ、もう一枚の石版石か研磨用の金盤を重ね合わせ、適量の水を与えて擦るようにして研磨します。金剛砂は、粒子の粗いものから使用し、次第に粒子の細かいものに変えていきます。
石版石は、研磨によって仕上がる版面の調子が変わります。金剛砂で研磨した後、磨石で版面の砂目が消えるように細かく平滑に磨き上げたものを「磨き石版」と呼びます。この磨き石版は主に転写やペンでの描画に向いています。反対に、磨石で表面を磨き上げた後、ごく少量の水か、もしくは水を使わずに金剛砂で研磨し砂目を立てたものを「砂目石版」と呼びます。番数の高い金剛砂で仕上げた場合、表面の砂目は細かくなり、クレヨンで繊細に描画するのに適しています。また、番数の低い金剛砂で表面を粗い砂目に仕上げた場合、インクを厚く盛って印刷することができます。
最近では、金剛砂の代わりとして人造研削材であるカーボランダム(炭化珪素)を用いることが多くなっています。カーボランダムは、黒色で金剛砂よりも硬度が高いのと切れ味が良いのが特徴です。
金剛砂は、版画画材専門店や工業製品の資材店などで購入することが可能です。
関連科目
参考文献
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「広辞苑」第五版 新村出/編 岩波書店 1998年
監修
永井研治 通信教育課程油絵学科教授
作成日・改訂
2009年02月23日作成