裏打ち(版画) うらうち(はんが)

Backing (Prints)

版画の裏打ちは、木口木版画やリトグラフにおいて、雁皮紙(がんぴし)などの薄い紙に刷られた作品を、しっかりと厚みをもった台紙に貼り込むための技法です。

この技法は、薄い雁皮紙などに摺刷(手摺りによるプリント)する木口木版で多く使用される技法ですが、他の様々な版種において薄い紙に刷られた作品やドローイングなどに幅広く活用することができます。裏打ちの台紙に用いられる紙は、ある程度の厚みを持った丈夫な洋紙が一般的に用いられます。特にその中でもBFKリーブは、丈夫で表面が適度に平滑なため、好まれて使われています。

木口木版で雁皮紙のような薄い紙を使用して摺刷した場合には、インクが紙の裏側まで浸透します。この時、紙の裏側にも表面と同じインクの発色が得られるために、これを利用し、紙の表面側と裏面側の計2枚を、左右もしくは上下対称に台紙に貼り込む「鏡貼り」という手法もあります。この鏡貼りによってできる作品は、鏡に映したようなシンメトリーのイメージの作品ができるのが特徴です。

裏打ちの手順としては、まず、印刷して乾燥させた作品を貼り込むサイズに切っておき、台紙は合板などにあらかじめ水張り(平張り)をしておきます。切った作品は、薄く透明な塩化ビニル板(薄いアクリル板でも良い)の上に作品の裏面を上にして置き、水で溶いたでんぷん糊を刷毛で中心から放射状に塗布します。作品全面に糊を塗布した後、作品から塩化ビニル板にはみ出した糊を雑巾やウエスできれいに拭き取ります。拭き取ることができたら、糊を塗った作品を板ごと台紙の上に置いて圧着し、塩化ビニル板のみをはがします。後は作品を台紙にしっかりと接着させるために、刷毛(打ち刷毛)を使って中心から外へ空気を抜くように叩きながら圧着させます。刷毛がない場合には、台紙の上に置いた後、塩化ビニル板の上からハンドローラーで圧を与えて貼り付けると良いでしょう。
また、このでんぷん糊を使う方法以外では、スティック糊を使い台紙となる洋紙に張り込みを行う方法も存在します。

裏打ちは、版画以外でも書画を台紙に貼り込む伝統技法として様々な分野で古くから用いられています。日本画の裏打ちでは、和紙や絵絹を補強するために、生麩糊(しょうふのり)を用いて細川紙や薄美濃紙などの裏打紙に貼りこみます。この日本画の裏打ちには、本打ち、地獄打ちと呼ばれる二つの裏打ち技法が存在します。

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参考文献
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「日本画 表現と技法」武蔵野美術大学日本画学科研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年

監修
塙太久馬 通信教育課程油絵学科非常勤講師

作成日・改訂
2009年02月13日作成