版木 はんぎ
Printing Block
版木は、木版画の制作において、版材として用いられる木板のことです。
版木は、木の繊維に沿うように縦に裁断された板目と木の繊維に対して垂直に輪切りに裁断された木口の2種類に分けることができます。
板目の版木を用いた板目木版は、柔らかい表現が可能で、水性木版などでは版の木目を活かした表現することも可能です。さらに板目の版木は、薄い木の板を重ね合わせた合板のベニヤ板と一枚板である無垢板の二つに分けられます。かつての浮世絵版画では、無垢板の版木が用いられていましたが、現在では、科(榀)の木から作られるシナベニヤが広く一般的に使用されています。これは版画作品の大型化に伴い、一枚板の無垢板では大きなサイズの板が取れないこと、ベニヤ板と比べて無垢板が比較的高価なことなどが理由に挙げられます。ベニヤの板では、シナベニヤとラワンベニヤが代表的で、厚さは1mm程度から20mm程度のものがありますが、6mmから9mm程度のものが一般的によく使用されています。無垢板では、桜や朴、桂、梨などの広葉樹種の木材が向いているとされます。浮世絵の版木には伊豆の山桜が好んで使用され、目が細密で刃物が入りやすく当時最高の版材とされていました。
木口の版木を用いた木口木版は、版木が板目よりも硬質なため、緻密で繊細な表現が可能です。木口木版の版木には黄楊(ツゲ)や椿、梨、楓などの木材が使用されます。版木は通常、木を輪切りにされた大きさまでのサイズしか取ることができないため、桜や黄楊、樺を木口に切ったものを接着した寄木の版木も作られています。木口木版の版木を彫る際には、版面を紙やすりで研磨してから使用する必要があります。
この他に版木の代用として、ヨーロッパで油性木版に用いられるリノリウムという建材がありますが、日本ではあまり一般的ではありません。
版木は版画用品が置いてある画材店で購入することができます。