彫刻刀 ちょうこくとう
Chisel
分類
彫刻刀は、木版画(板目木版)の際に使用される刃物で、木製の柄の先端に鋼鉄の刃がついた版木を彫るための道具です。
彫刻刀はそれぞれの刃先の形状から名前が付けられており、一般的に切り出し刀、平刀、丸刀、三角刀、の4種類が多く使用されています。この他に、諸刃(両刃)や曲がり刀、見当ノミ、さらいノミなどの種類があります。
切り出し刀は、版木刀や小刀とも呼ばれ刃先が斜めの形状をしており、描画部の輪郭を切り出す場合に使われ、伝統木版(浮世絵)の時代には最も使用頻度の高い彫刻刀でした。
平刀は、刃先が平らのものを平刀、弧状になっているものを間透(あいすき)と区別して呼びます。どちらも刃の断面は平坦です。切り出し刀や丸刀で彫り入れた後の不要な部分をさらう場合や、版面を浅く斜めに彫る板ぼかしと呼ばれる技法を行う場合に使用します。
丸刀は刃の断面が半円になっており、特に刃の幅が狭いものは駒透(こますき)と呼ばれ、細い彫りができるのが特徴です。丸刀は、切り出し刀で彫った後にその周りの不要な部分を彫り取る場合や、曲線の輪郭を彫る場合に使用するとよいでしょう。この他に半円が浅いものを浅丸刀、深いものを深丸刀と呼ぶことがあります。刃の幅が広い浅丸刀は不要な部分を大きくさらうときに使用すると便利です。
三角刀は刃の断面がV字になっており、鋭い直線的な線を彫る場合に使用します。版面に刃先を深く入れて彫ることで太い線を、浅く入れることで細い線を彫ることが可能です。また、V字の内角度にはいくつか種類があり、この角度によっても彫る線の太さが変わります。
何れの彫刻刀で版を彫る場合にも、描画部の版の断面が末広がりの台形になるように彫るように注意します。こうすることで、版の欠けを防ぐことができます。
使用後は、彫りくずを払い、ウエスなどで油を薄く引き、湿気の無い場所で保存します。
彫刻刀の柄部分には、朴の木を用いた長柄に刀身部をはめ込んだ「上手工(じょうしゅこう)」と、桜の木片で刀身部を挟み、口金で締めた「桜二つ割り」という種類あります。この他、学童用のものでは、ゴム製の柄のものも市販されています。彫刻刀の刀身部は地金と鋼の2つの鉄が合わさって一枚の刃となっており、刃先が欠けてしまった場合や、切れ味が鈍くなったら砥石を使い、刃を研いで使うとよいでしょう。
彫刻刀は、刃物の専門店や版画材料を扱う画材店で購入することができます。
関連科目
参考文献
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年
・「版画 進化する技法と表現」佐川美智子/監 岡部万穂/編 文遊社 2007年
・「版画の技法と表現」町田市立国際版画美術館/編 1987年
・「図画工作・美術用法事典」相田盛二/著 日本文教出版株式会社 1996年
監修
塙太久馬 通信教育課程油絵学科非常勤講師
作成日・改訂
2009年02月10日作成