仮想ボディ かそうぼでぃ
Imaginary Body
仮想ボディとは、書体を設計する際に、大きさの規準となる枠のことを指します。例えば12ポイントの大きさ(1ポイント=0.3514mm)の書体は4.217mm×4.217mmの枠の中に設計されますが、この枠を仮想ボディといいます。文字の大きさは、仮想ボディのサイズで示されます。ただし書体は、仮想ボディいっぱいの大きさで作られる訳ではなく、その内側に設定された、ひと周り小さいもう一つの枠(基準枠)の中に作られます。実際の字の大きさよりも大きい枠、つまり仮想ボディがあることで、2つの文字が並んだ時に文字同士がくっついてしまうことがなくなります。
仮想ボディと実際の文字の大きさ(字面・じづら)の関係は、字間のアキの調整に大きく関係します。例えば、仮想ボディの枠に従って文字を並べることを「ベタ組み」と呼びますが、このようにすき間なく組むと和文書体の場合、仮名の文字の間が空いて見えたり、漢字の文字の間が詰まって見えたりすることがあります。これは和文書体を設計する際、仮名は漢字よりも小さい基準枠の中に作るため、字面と仮想ボディの間が漢字よりも空いてしまうからです。また「っ」や「ゅ」等の促音等、字面の小さな文字もあるため、見出し等、特に目立つ文字を組む場合はベタ組みの状態から、個々の文字の字面を考慮して字間を調節する必要があります。このように個々の字面のプロポーションを見てバランスよく組むことを、プロポーショナル組みと呼びます。また仮想ボディは同じでも、書体によって字面の大小があるので、文字を組んだ場合、空いて見える書体や詰まって見える書体があります。ただしあくまで文字の大きさといった場合、字面の大きさではなく仮想ボディの大きさをいいます。
「仮想ボディ」という呼び方は活版印刷の時代のなごりです。活版印刷に使われる活字は、鉛を主成分とする金属でできているため「仮想」ではなく実際に物理的なボディでした。そのため、ベタ組みの状態から字間を詰めることはできませんでしたが、写真植字やコンピュータで文字組みができるようになると物理的なボディは消え、仮想の枠として存在することになり、自由に文字を詰めたり重ねたりすることが可能になりました
関連科目
参考文献
・「レタリング・タイポグラフィー」後藤吉郎 小宮山博史 山口信博/編 武蔵野美術大学出版局 2002
・「タイプフェイスデザイン探訪」今田欣一/著 欣喜堂 2000
・「日本語のデザイン」永原康史/著 美術出版社 2002
・「DTP WORLD 2007年11月号」ワークスコーポレーション
参考ウェブサイト
・大日本スクリーン製造株式会社
監修
横溝健志 通信教育課程工芸工業デザイン学科教授
作成日・改訂
2008年06月06日作成