リトグラフ りとぐらふ
Lithographs
リトグラフは、石版石(石灰岩)や金属板(アルミ板・ジンク板)の平らな版面(平版)を、油性インクを引き付ける部分と水分を保つ部分(インクを弾く部分)に化学的処理で分離し、水と油の反発作用を利用して専用のプレス機により刷る版画です。版面に直接描いた絵を、ほぼそのまま紙に刷り取れるのが特徴です。
リトグラフはアロイス・ゼネフェルダー(Aloys Senefelder 1771-1834年)が、1796年ドイツで石灰石に簡単なメモを残していたものを酸で処理した後、石鹸水で消そうとしたことがヒントとなり、その後研究を重ねた結果、1798年に技法を完成させました。
リトグラフの基本的な刷りの工程は、石版石または金属板の上に、リトクレヨンや解墨などの油脂分が多い描画材で描画し、その後、版全面の化学的な製版処理により、描画した部分は水を弾いて油分を引き付ける親油性となり、描画していない部分は水で濡らした時に湿った状態を保つ親水性(保水性)となります。この相反する性質部分を持つ版面にローラーで油性インクを盛ると、親水性の部分ではインクが弾かれ付着せず、親油性の部分のみにインクは盛られます。このようにしてインクが盛られた版の上に紙を乗せて、プレス機で圧力をかけることで転写します。
元来、リトグラフの版にはドイツのゾルンホーフェン(Solnhofen)石切場で採掘される石灰石を使用していましたが、日本では版画の大型化や物理的な要因に伴って金属板(アルミ板)を用いることが多くなっています。また、化学処理された木板を使い、専用の用具で描画する木版リトグラフと呼ばれるものや、シリコンで非描画部分をマスキングして製版を行うことで水を使用しないウォーターレスリトグラフなどの新たな材料や方法も開発されています。
関連科目
参考文献
・「版画」武蔵野美術大学版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画の技法と表現 改訂版」町田市立国際版画美術館 2003年
参考ウェブサイト
・「2002-2006年 造形ファイル」 武蔵野美術大学
監修
永井研治 通信教育課程油絵学科教授
作成日・改訂
2008年02月13日作成