マーブリング まーぶりんぐ
Marbling
分類
マーブリングは、ゴム樹脂の水溶液に、水分に反発する描画材を落とすことで、水面上に描かれる複雑な模様や図柄を、紙などの支持体に写し取る技法です。
マーブリングは15世紀頃にトルコで生まれとされ、書籍の装飾用の紙などにこの技法が使用されてきました。マーブリングによって作られる紙は、写し取られる模様が大理石(marble:英)の模様に似ていることから、マーブルペーパー(トルコペーパー)と呼ばれています。トルコにおいてマーブリングはエブルと呼ばれ、現在でもこの技法を用いて作品がつくられています。エブルは、バットに張ったゴム樹脂(トラガカントゴム)の水溶液に顔料と牛の胆汁を混ぜた描画材を筆で落として、串などで模様を描き、空気が入らないように気をつけて水面に紙を置き、描いた模様を写し取る技法です。私たちがこの技法を行う場合には、アラビアゴム水溶液をゴム樹脂の水溶液の代用として、牛の胆汁を主成分とした画溶液(オックスゴール画溶液)と水彩絵具を混ぜたものを描画材の代用として使うことができます。手順はエブル同様に描画材をアラビアゴム水溶液の水面に数滴落として模様を作り、紙で吸い取ります。この時のアラビアゴム水溶液は薄目に作りますが、濃度の調整が難しいために濃い目のアラビアゴム水溶液を作り、そこに水を足して調節しながら行うようにしましょう。また、画材店では簡易に出来るマーブリングセットも売られていますので、使ってみるのもよいでしょう。
日本にも古くからマーブリングとよく似た「墨流し」という技法があります。その起源は平安時代に遡るとされ、墨流しによってできた複雑な模様を写し取った紙は、料紙などに多く用いられてきました。墨流しのやり方としては、バットなどに張った水に墨汁を筆で少量垂らして、その垂らした水面の墨に松脂の煮汁や油脂分のもの(テレピンなど)を含ませた筆の先端を浸けると、墨と油脂分が反発し、水面に同心円状に広がっていきます。これを繰り返し行い、水面に広げた墨を動かして複雑な模様作り出し、マーブリング同様空気が入らないよう気をつけながら和紙を浸して模様を吸い取ります。墨流しによってできた模様は、マーブリングに比べ自然な風合いがあるのが特徴です。この墨汁を使う方法以外に、水を張ったバットに油絵具をテレピンで溶いたものやリトグラフ用のインクをワニスで溶いたものを垂らして簡易に墨流しを行う方法もあります。
関連科目
参考文献
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年
・「新潮世界美術辞典」新潮社版 1985年
・「図解 日本画用語事典」東京藝術大学大学院文化財保存学日本画研究室/編 東京美術 2007年
・「岩波西洋美術用語辞典」益田朋幸 喜多崎親/編著 岩波書店 2005年
監修
永井研治 通信教育課程油絵学科教授
作成日・改訂
2009年02月10日作成