フロッタージュ ふろったーじゅ
Frottage
分類
フロッタージュ(frottage:仏)は、凹凸のあるものの上に紙を置き、鉛筆などの描画材でこするように描くことで、対象の凹凸や形状を写し取る技法です。フランス語の「frotter(こする)」に由来します。
写し取る対象は、木目のある板、石やマンホール、粗い目の布、葉、コインなど、表面の凹凸が適度に明瞭な素材であれば、身近にある様々な物でフロッタージュができます。使用する紙は、比較的薄くて柔軟性があり、こすっても破れにくい上質紙や薄い和紙などが適し、画用紙などの厚みのある紙は対象の表面を写しにくく適していません。描画材は、鉛筆、コンテ、クレパスなど適度な硬さを持つものがよく、写し取る対象の上に重ねた紙全体を、万遍なくこするように描いていくと、素材の凸部分は色が濃くつき、凹部分は色がつきにくいため淡くなります。その濃淡の差により、写し取る対象の凹凸や形状が浮かび上がります。また、使用する描画材や紙により、同一の対象でも異なった表現効果で写し取ることができます。
古くは東洋の拓本(たくほん)と呼ばれる、文様や刻銘を紙に写し取る技法があり、乾拓と湿拓の2種の方法があります。乾拓はフロッタージュと同じ原理で、和紙の上に釣鐘墨という摺り出し用の固形の墨でこすって凹凸を写し取るもので、湿拓は水分を含ませた和紙の上からタンポで叩き一度凹凸を浮かび上がらせた後、絵具の付いたタンポで凸面に絵具で彩色します。
フロッタージュは素材選びや画面構成で制作者の意図が反映されますが、写し取られるイメージは、制作者のコントロールや意識に関係なく偶然性にゆだねられます。その偶然や無意識により現れたイメージは、見る者の想像力を拡大させる効果があるとし、マックス・エルンストをはじめシュールリアリストの画家は、デカルコマニーなどと共に、オートマティスムの一つの手法として愛好しました。その後、フロッタージュの応用としてグラッタージュ(grattage:仏)と呼ばれる、キャンバス上に油絵具を塗っておき、裏から写し取る対象を押しあて、キャンバス表面にできた凸部の絵具を削ることで、対象の形などを写し取る絵画技法も生まれました。
フロッタージュの際は、写し取る対象の材質により、傷や汚れなどをつける場合がありますので注意が必要です。