バレン ばれん

Baren

バレンは、木版画の制作において、摺りの際に版木の上に乗せた紙を擦ることで圧をかけ、版木にのっている絵の具を紙へと転写させるための摺り道具です。

バレンの古くは中国から伝えられたといわれ、日本で改良されて長きに渡り使用さている道具で、現在では様々な種類のものが市販されています。バレンの構造は、当て皮、芯、竹皮から作られており、代表的なものでは、和紙を数十枚重ねて貼り合わせた上に漆を塗って仕上げた当て皮と竹皮を細かく裂いて撚り合わせたものを渦巻き状に巻いたバレン芯を、真竹の皮で包んだ、本バレンと呼ばれるものがあります。この本バレンのバレン芯は、竹皮を4本に裂いて拠り合わせた「小ない」と呼ばれるものから作られており、この小ないを編みこんで芯を作ります。小ないを2本編みこんだものを「中ない」と呼び、一般的には、中ないを2本編みこんだ「八ッコ」と呼ばれるものがバレン芯に多く用いられています。また、細く裂いた竹皮で作ったものを細芯と呼び、太く裂いて作ったものは太芯呼びます。細芯は繊細な彫った際の摺りなどに、太芯はベタ版や広い版面を摺る時に向いています。
この他の竹の皮で包んだバレンは、代用バレンと呼ばれています。代用バレンは、バレン芯がテトロンやナイロン、紙ひも、木綿、麻、ボール紙などで作られており、当て皮は樹脂や合板、厚紙などから作られています。本バレンや代用バレンは、摺りの前にパッド(フェルト)の上で、竹皮に椿油を馴染ませてから使用します。これは和紙の上を擦る際にバレンの滑りをよくするためです。摺る際には、バレンの竹皮の結び目の部分に親指以外の指を掛けて、手のひらでしっかり握るようにし、親指で上からしっかり押さえるようにして握ります。動かし方としては、はじめに紙が動かぬように、全体を押さえるようにして、次第に細かく小さく動かしていきます。この時バレンはなるべく傾けないようにして、手のひらのふくらみの部分に力を入れて平均的な圧がかかるようにします。バレンは摺りを行っていくと竹皮が摩耗するため、バレン芯の凸部に沿って穴が開き始めてきたら、竹皮を交換するようにしましょう。
竹皮で包んだバレン以外には、ボールベアリングを内蔵したバレンや、芯に金網を使用した八角バレン、樹脂製のディスクバレンなどの種類があります。
バレンは、版画材料を扱う画材店などで購入することが可能です。

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参考文献
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年
・「版画 進化する技法と表現」佐川美智子/監 岡部万穂/編 文遊社 2007年
・「版画の技法と表現」町田市立国際版画美術館/編 1987年
・「図画工作・美術用法事典」相田盛二/著 日本文教出版株式会社 1996年

監修
塙太久馬 通信教育課程油絵学科非常勤講師

作成日・改訂
2009年02月10日作成

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  • 本バレンの構造本バレンの構造
  • 代用バレンの構造(代表的なもの)代用バレンの構造(代表的なもの)
  • バレンの種類本バレン本バレン
  • 代用バレン代用バレン
  • ボールベアリングバレンボールベアリングバレン
  • ボールベアリングバレンボールベアリングバレン
  • ディスクバレンディスクバレン
  • バレンの持ち方バレンの持ち方
  • 左・椿油 右・バレンパット左・椿油 右・バレンパット

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