キャンバス釘 きゃんばすくぎ
Canvas Tacks
キャンバス釘は、キャンバス(画布)と木枠を張り留める際に用いる釘で、「タックス」とも呼びます。
張りキャンバスは、キャンバスが木枠を側面まで覆い、縁に沿って等間隔にキャンバス釘が打ち込まれ、均等な張力で固定されています。そのため、釘を抜くことで、キャンバスを何度でも張り替えることができます。一般的な木工用の釘(市販の張りキャンバスの釘は、この形状に近い)は、円柱の先が尖ったような形状で、抜け難くなっていますが、キャンバス用の釘は釘頭の根元から角錐状のくさび形をし、長さも13mm程度と短めなため、比較的抜きやすく、キャンバスを傷めずに剥がすことができます(逆に抜けにくくするための長めの釘もあります)。ちなみに、キャンバス釘を抜く際は、釘抜きや、マイナスドライバーを用います。
キャンバス釘の材質は、主に鉄製やステンレス製のものがあり、鉄製のものは安価で、ステンレス製のものはサビに強くなっています。湿度などによって釘がサビると画布や木枠を傷め、画布を張り替える際に抜けなくなってしまいますので、サビに強いステンレス製を使用する方が望ましいでしょう。また、最近ではステンレス製より安価でサビ難い「鉄製真鍮メッキ」仕様のものや、原料が樹脂なためサビず、なおかつ自然還元型で環境に配慮した「ECO tacks」というものも市販されています。
キャンバス釘の代用品として、ガンタッカを使用することもあります。建築用ホッチキスといったようなもので、コの字型をした針(ステープル)によって画布を木枠に止めます。ただし、あくまでも代用品であり、強度や長期的保存性は、不安が残ります。ガンタッカの針にも、安価な鋼鉄製と、サビに強いステンレス製があり、幅が12mmで、長さは、6mm、10mm、13mm(ステンレス製は13mmのみ)と数種類あるので、長めの針を利用することで、よりしっかりと固定できます。
取り扱いの注意として、キャンバス釘の先端は、大変鋭利なため危険です。キャンバスを張る際や保管場所などには、十分注意しましょう。また、鉄製の釘は、サビが出やすいため、湿度の少ない場所で保管しましょう。
キャンバス釘は、一般的な画材店で購入できます。
参考文献
・「絵画(素材・技法)」武蔵野美術大学油絵学科研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「絵画材料事典」R・J・ゲッテンス・G・L・スタウト/著 森田恒之/訳 美術出版社 1999年
・「絵画技術全書」クルト・ヴェールテ/著 佐藤一郎/監 美術出版社 1994年
・「絵画の教科書」谷川渥/監 小澤基弘・渡邊晃一/編 日本文教出版 2001年
参考ウェブサイト
・ホルベイン画材株式会社
監修
堀内貞明 通信教育課程油絵学科教授
作成日・改訂
2009年03月30日作成