でんぷん糊 でんぷんのり

Starch Paste

でんぷん糊は、主に紙同士を接着する際に用いられる、もっとも一般的な水溶性接着剤の一つです。内容成分は穀物や芋類などの植物からとれるでんぷん質から成っていて、古くは平安時代より利用されてきました。硬化前は水分を含んでいるので粘性の高いゲル状ですが、水分が蒸発することででんぷん質が硬化し固着します。

市販のでんぷん糊は、コーンスターチ(トウモロコシでんぷん)やタピオカ(キャッサバの根茎)などを原料としたもので、ビニール系樹脂のチューブや容器などに封入して販売しています。一般的によく見ることのできる「ヤマトのり(ヤマト株式会社)」という糊は、このでんぷん糊を指します。

でんぷん糊は、事務や一般的な工作をはじめ、様々な場面で利用されています。版画の水性木版では、版木に絵具をのせたあと、水を加えて柔らかくした糊をのせて混ぜます。こうすることで絵具にコシをもたせ、乾燥を遅らせることができます。日本画では、和紙の裏打ちや絵絹の張り込みなどで使用します。ただし、糊によっては防腐剤が含まれていることがあり、変色の可能性があるため、生麩糊(しょうふのり)を用います。生麩糊は、文化財の修復などでも用いられています。他に、蕨(わらび)の根からとれる蕨糊(わらびのり)や、海草からとれる麩糊(ふのり)などがあり、これらのでんぷん糊を用いる場合もあります。

使用上の注意として、でんぷん糊は硬化時の水分蒸発により体積が収縮するため、紙の種類によってはシワができやすくなります。また、使用後は、糊の乾燥を防ぐため容器にキャップをして保管しましょう。でんぷん糊は、文房具店や画材店などで購入できます。

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参考文献
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「日本画」武蔵野美術大学日本画学科研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「新装版 絵画材料事典」R・J・ゲッテンス G・L・スタウト/著 森田恒之/訳 美術出版社 1999年
・「ものづくり 道具のつかい方事典」峰尾幸仁/監修 岩崎書店 2002年
・「接着の科学」竹本喜一 三刀基郷/著 講談社 1997年

参考ウェブサイト
ヤマト株式会社

監修
田中克明 通信教育課程工芸工業デザイン学科教授

作成日・改訂
2008年04月25日作成