製版液 せいはんえき

Platemaking Solution

製版液は、金属版を使ったリトグラフを製版する際に使用する、非描画部を不感脂化させる溶液です。アラビアゴム溶液に、リン酸と氷酢酸を加えた混合液で、エッチゴム液とも呼ばれます。

リトグラフは水と油が反発する性質を応用して刷る版画で、製版により親水部分と親油部分を化学的・物理的に作ります。製版液は、非描画部に酸化皮膜を作り、親水性を持たせます。
製版液は、描画後の版面に、刷毛やスポンジを使って均一に塗布します。この時、厚塗りだと、以後の工程で描画部を落とす妨げとなり、薄すぎると版のつぶれや汚れの原因になります。また、解墨を使った版の場合、塗布時に墨が解けてくる場合があるので注意します。製版液は乾く時に最も効果を発揮するので、塗布後は完全に乾燥させ、版に作用させます。

製版液の酸濃度は、描画の状態や気温などによって調節します。一応の目安として、アラビアゴム溶液100に対しリン酸1~2%、氷酢酸0.1~0.2%を混合します(武蔵野美術大学・清水昭八処方)。この時、リン酸濃度が高いと、描画部分が腐食され、描画が薄くなるので注意が必要です。この処方以外にも、アラビアゴム溶液にエッチ液を加えたものや、すでに酸を調合して市販しているSK液などの不感脂化液で代用ができます。

製版液を混合する場合は、換気の良い場所で行います。
アラビアゴムは一般的な画材屋で、リン酸、氷酢酸は薬局で購入できます。

テキストを全て表示

関連科目

参考文献
・「版画」武蔵野美術大学版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画の技法と表現 改訂版」町田市立国際版画美術館 2003年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年

参考ウェブサイト
「2002-2006年 造形ファイル」 武蔵野美術大学
エスケー液製造株式会

監修
永井研治 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2007年09月10日作成