日本画絵具 にほんがえのぐ
Nihonga Paint
古来より人類は、自然の中にある鉱石や土、動植物等、身近に得られるものを色材にしてきました。日本画絵具は、その原型をとどめた絵具を現代まで伝承しています。加えて近代では、天然絵具の希少なことや色幅の拡張を求められて、人工的な絵具も造られるようになりました。通常は、色の素となる顔料と接着の役割をする媒材の混合物を「絵具」としますが、それに対し日本画絵具の多くは、色の素となる顔料が絵具であり、絵具そのものに接着性はありません。制作の際には、膠により支持体に定着させます。
日本画絵具は種類が多く、それぞれの性質に違いがあるため、特性を知ることが大切です。
鉱石が原料の「岩絵具」は、砂のような粉末で美しい絵具です。土が原料の「水干絵具」は、微粒子で伸びがよい絵具です。岩絵具と水干絵具は人工的なものもつくられ、色数が豊富です。貝殻が原料の「胡粉」は、微粒子の白色絵具です。「朱」は硫黄と水銀、「丹」は鉛の人工的につくられた化合物絵具です。動物が原料のものは、珊瑚虫が死滅して残ったものを粉砕した「珊瑚」、サボテンに棲息する紅蟲から抽出した色素「コチニール」があります。植物が原料のものには、「藍(あい)」のように染料を顔料化して絵具にしたもののほか、果実を煮出して用いる「皀莢」「夜叉五倍子」、海黄樹(かいとうじゅ)の樹脂「藤黄」があります。顔料を蜜蝋やアラビアゴム等の媒材で練り固めた水で溶くだけで使える水絵具には、角皿に入った「顔彩」、丸皿に入った「鉄鉢」、棒状に固めた「棒絵具」があり、定着力が弱いので、スケッチ等に適しています。
絵具は、1枚の絵皿につき1色を溶きます。日本画の彩色表現は「重色」を用いるためです。定着力を保持しつつ絵具の発色を良くするため、下塗りは絵具には濃い膠水、上塗りするに従い薄めの膠水にし、また、粗い絵具は濃い膠水、細かい絵具は薄めの膠水する傾向があります。
日本画絵具は、日本画の材料を取り扱う画材店で購入できます。
関連科目
参考文献
・「画材と素材の引き出し博物館」 目黒区美術館/編 中央公論美術出版 1995年
・「人気作家に学ぶ日本画の技法 画材と技法」 同朋舎 1997年
・「新技法シリーズ 日本画の表現技法」 石踊紘一、高嵜三朗/著 美術出版社 1978年
・「花を描く」 松尾敏男/監修 日本放送出版協会 1995年
監修
重政啓治 通信教育課程油絵学科教授
作成日・改訂
2009年03月04日作成