凹版 おうはん

Intaglio

凹版は、凹部に描画イメージ(画像)を持つ版形式です。版面に作り出した凹部にインクを詰め、プレス機で圧をかけて印刷します。腐蝕させて凹部を作るエッチングや直接彫るエングレーヴィングなどの技法がある銅版画はこの形式に属します。

版画には凸版、凹版、平版、孔版の4つがあります。凹版はその名前のとおり、「版を彫る」「腐蝕させる」などの物理的な処理を加えて凹部を作り出します。この凹部にインクを詰めプレス機で圧をかけることで版から紙へインクを転写させることができます。
凹版の起源は15世紀イタリアで金具などに彫刻を施す金属細工師が図案等の記録用として印刷を始めたことだといわれます。現在では銅版画のほかに、工業用として紙幣(深凹版印刷)や一部の記念切手・証券の印刷、グラビア印刷による写真印刷などに凹版が使用されています。
銅版画は、直接凹版技法(直刻法)と間接凹版技法(蝕刻法)という2つの製版方法に分けることができます。直接凹版技法は版面を直接印刻することで凹部を作り製版する方法で、ビュランで直接彫るエングレーヴィング、ニードルで彫るドライポイントなどの技法があります。間接凹版技法は、描画をしない部分に防蝕剤(グランド・黒ニス)を塗布し、それら防蝕膜をかき取るように描くことで金属面を露出させて、塩化第二鉄や硝酸などの腐蝕液に浸し、描画部である露出させた金属面を腐蝕させて凹部を作り出す製版方法です。この間接凹版技法にはエッチングやアクアチントなどの技法があります。
工業用のグラビア印刷は、版が銅製でできた円筒形のローラーになっており写真製版や腐蝕、レーザー彫刻などによって製版され、版をインクに浸すことで凹部にインクを充填します。そして凸部にも付いたインクを拭取った後、版と紙を圧着することで印刷を行います。グラビア印刷は写真印刷や商品のパッケージなどに多く使用されています。

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参考文献
・「版画事典」室伏哲郎 著 東京書籍 1985年
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室 編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画の技法と表現」町田市立国際版画美術館 1987年

参考ウェブサイト
国立印刷局

監修
今井庸介 通信教育課程油絵学科非常勤講師

作成日・改訂
2008年09月10日作成