メゾチント めぞちんと

Mezzotint

メゾチント(mezzotint:英)は、あらかじめ版面にロッカーなどの道具を用いて、無数のまくれ(穴)を作り、それを削ることで描画する直接技法のひとつで、豊かな明暗濃淡に富み柔らかい階調の表現を得られるのが特徴です。フランス語でマニエール・ノワール(黒の技法)と呼ばれることもあります。

メゾチントは1624年にオランダのルートヴィッヒ・フォン・ジーゲンが発明して以来、油彩画の複製や書物の挿絵などに使用されてきました。近代に至るまで、美術作品を作る技法としてはあまり活用されていませんでしたが、長谷川潔や浜口陽三などの功績もあり、今では数多くの美術作品がつくられています。
メゾチントは描画の前に、ロッカー(ベルソー)と呼ばれる道具を使い製版します。ロッカーは、版面に当て左右に揺らして使用します。この作業を縦、横、斜め(対角線2方向)の4方向から、均一な無数のまくれができるまで繰り返し行います。これを「目立て」と言います。こうして版面は、サンドペーパーのような状態になります。ロッカーで作り出したまくれにインクが絡まることで黒く印刷する事ができ、スクレーパーやバニッシャーを使用して、まくれを削り取り深さを加減することで、灰色や白色などの階調を作りだします。また、ロッカーの代用として、カッターやルーレット、ハーフトーンコームなどの道具を使って目立てを行うこともできます。
メゾチントは、プレス機の圧によりの版面のまくれがつぶれてしまうために耐刷性に乏しく、印刷できる枚数が限られています。しかし、版にクロームメッキ処理を施すことで、刷れる枚数を増やすことが可能です。

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参考文献
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年
・「銅版画のテクニック」 深澤幸雄/著 ダヴィッド社 1966年
・「銅版画のマチエール」 駒井哲郎/著 美術出版社 1992年
・「事典プリンツ21」 室伏哲郎/著 プリンツ21 1997年
・「版画の技法と表現」町田市立国際版画美術館/編 1987年
・「世界版画史」青木茂/監 美術出版社 2001年

監修
今井庸介 通信教育課程油絵学科非常勤講師

作成日・改訂
2009年02月18日作成