ドライポイント どらいぽいんと
Drypoint
ドライポイントは、金属版を直に印刻し、描画をする直接凹版技法(直刻法)のひとつです。版材より硬い鋼鉄製のニードルなどを使用し直接版面にイメージを刻み込みます。こうしてできた版は、印刷すると直接刻まれた刻線の両側にできるまくれにもインクが絡まることで、独特のやわらかく滲み(にじみ)のある描線を表現することができます。
ドライポイントの歴史は古く、1480年頃のドイツでつくられた作品が最古のものとされています。同じ直接凹版技法であるエングレーヴィングと比べると、技法や道具への熟練をあまり必要としないために簡単に自由な線を描くことができるのが特徴です。
ドライポイントは、版に直接線を刻んで描画するために、ニードルなどによって描かれる刻線に沿って押しのけられた金属が線の両側に盛りあがります。この盛り上がりをまくれ(バー、あるいはバール)と呼びます。版にインクを詰めると、まくれの裏にもインクがたまり、このインクも紙に刷り取られるために滲みのある柔らかな線となって印刷されます。まくれの大きさや形状は、描画材である針や刃の硬さ、描刻時の力の入れ加減(筆圧)や針が版に当たる角度などによって変化するために、様々な表情の線を作り出すことが可能です。
ドライポイントによってできるまくれの修正は比較的容易です。余分なまくれは、スクレーパーで削り、バニッシャーで磨いて修正をします。軽めの修正であれば、耐水ペーパーを使用するとさらに容易にまくれを除去することができます。描画途中に刷りあがりを確認したい時には、印刷時と同様に版にインクを詰めて拭き取り、半透明のフィルムを版上に置き、透かして見ると刷りあがりのイメージを大まかに確認することができます。
ドライポイントは性質上、少量しか印刷することができません。これは版のまくれが摩滅しやすく、プレス機で印刷すると圧力によってつぶれてしまうためです。このため試刷りはなるべく少なくし、より多く刷りたい場合は、鋼鉄やクロームで表面にメッキ加工を施すことで、50枚程度の印刷が可能になります。
関連科目
参考文献
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年
・「銅版画のテクニック」 深澤幸雄/著 ダヴィッド社 1966年
・「銅版画のマチエール」 駒井哲郎/著 美術出版社 1992年
・「版画の技法と表現」町田市立国際版画美術館/編 1987年
監修
今井庸介 通信教育課程油絵学科非常勤講師
作成日・改訂
2008年12月18日作成