タイポグラフィ たいぽぐらふぃ
Typography
タイポグラフィは、もともと活版印刷術のことを指していましたが、現在では広く印刷物のために文字を組む技術のことを意味する言葉になっています。
15世紀にグーテンベルクによって印刷術が発明されて以降、それまで手書きであった書物など文字情報のメディアは、一定の型(type)から作られる活字によって組み上げられ、大量の印刷物となって普及していきました。それに従い、文字の書体(typeface)のデザインや、文字の大きさや行間の距離、字間の量、一行の文字量等を設計して並べる技術(文字組み・組版)が重要になってきました。
印刷物のデザイナーはそれらの技術を使い、読みやすく、美しく文字を組む必要があります。狭い意味での「タイポグラフィ」はこの組版の技術のことを言いますが、広い意味では文字や印刷についての文化的、歴史的な面もタイポグラフィの領域として扱う場合があります。一口に文字の組み方といっても、その手法にはその時代の技術的、あるいは思想的な背景が深く関係しているからです。例えば19世紀末につくられた印刷物には、手書きの要素を残した優美な書体の使用や、左右対称の紙面構成、手工芸的な装飾要素等が見られますが、20世紀初頭に起きた「ニュータイポグラフィ」と呼ばれる運動では、サンセリフの書体の使用、装飾性を排除した左右非対称の紙面構成等、全く違ったタイポグラフィが出てきました。この変化は、印刷物というものが私的で美術品的なものと考えられていた時代から、公共的で機能的なものへと人々の認識が変わってきたことと関係があります。今日では印刷物だけでなく、映像やweb上での文字等にもタイポグラフィの領域は拡大されており、webページ上での文字の扱いや動きの要素を持った文字のデザイン等、新しい課題も出てきています。