スクレーパー すくれーぱー
Scraper
スクレーパーは、銅版画の制作において、描画の際にできた版上のまくれを除去する際や、トーンの調整、刻線そのものを除去する、プレートマークの仕上げなど様々な用途で使用される刃物です。刃の断面が三角形または三稜の形をしていることから、三稜刀(さんりょうとう)と呼ばれることもあります。
スクレーパーの刃は先端に行くほどに緩やかなカーブを描いて尖っています。角の部分が鋭利な刃となっていて、この刃で、版面のまくれや修正したい部分を削り取ります。
エングレーヴィングでは、ビュランを使用して版を彫った際に、溝の両側にまくれができます。このまくれをスクレーパーで削り取ります。スクレーパーは親指と人差し指、中指の三本で持ち、版面に小指を沿わせるようにして、刃の部分でまくれを削っていきます。プレートマークを作る際には、版の端を金やすりで斜めに削った後、スクレーパーを使用してささくれを綺麗にそぎ取ります。特にメゾチントにおいてスクレーパーは、描画材として使用されます。ロッカーなどで目立てをしてできたまくれをスクレーパーで削り取ることで描画します。まくれの高さを削り調整することで多くの階調を得ることができます。
いずれの作業も、スクレーパーを使用しただけでは多少のざらつきが残ってしまうために、使用した後にはバニッシャーで仕上げる必要があります。
スクレーパーには持ち手に木製の柄が付いたもの、全て金属製で片側にニードルやバニッシャーが付いているものなどいくつかの種類があります。保存の際には刃が錆びてしまわぬように、機械油を染み込ませたウエスなどを巻いて保存するのがよいでしょう。また刃を研ぐ際には、アーカンサスオイルストーンなどの砥石に機械油を使用して研磨します。簡単な研磨であれば、耐水ペーパーを砥石の代替として使用できます。
スクレーパーは版画材料を取り扱っている画材店などで購入することができます。
関連科目
参考文献
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年
・「銅版画のテクニック」 深澤幸雄/著 ダヴィッド社 1966年
・「銅版画のマチエール」 駒井哲郎/著 美術出版社 1992年
監修
今井庸介 通信教育課程油絵学科非常勤講師
作成日・改訂
2009年02月18日作成