ケント紙 けんとし
Kent Paper
ケント紙は、イギリスのケント地方にその名が由来する紙で、一般には化学パルプ100%を原料としています。平滑性が高く、適度な弾力性と厚みを持っており、鉛筆やペン、水性絵具など、多くの筆記具や画材と相性がよく、消しゴムを使った時に紙面の毛羽立ちが少ないのが特長です。ただし、水分によって伸縮しますから、水性絵具などの画材を用いる場合は、水張りをしてから使用すると良いでしょう。また、ケント紙の表裏を判別するのは難しく、手で触れたときに若干滑らかに感じる面が表側になります。
ケント紙は、たいへん幅広い用途を持った紙です。製図や建築パースをはじめ、グラフィックデザインやイラストレーションなどの平面構成、モデル製作のような立体構成にも使うことができます。またディスプレイやパッケージのデザイン用として、有色のケント紙を利用することもできます。
ケント紙は、サイズや厚さ(1平方メートルあたりの紙一枚の重量)によって様々な種類の商品があります。KMKケント(サイズ:四六判・A本判・10~30mのロール形状、厚さ:150g・200g・250g)は、製図用インクとも相性がよく、製図や建築パースで使われることの多い中性紙です。またバロンケント(サイズ:四六判、厚さ:150g・200g・250g)は、印刷用としても多く利用されています。BBケント(サイズ:B本判、厚さ:175g)は細目と荒目があり、コットンを原料としていて、表面にある程度の強度を持っている中性紙です。にじみが少ないため、緻密な描画に使うことができます。ホワイトピーチケント(サイズ:四六判、厚さ:150g・200g・250g)は比較的安価で、絵画やデザインの練習用としても広く利用できる中性紙です。他に、目の疲労を軽減するために、通常より白色度を抑えたものや、クリーム色のものがあります。ハガキと同じサイズのものや、パッド(紙の一端を糊付けしてつづったもの)になっているものもあります。
ケント紙は画材店などで購入することができます。
※描画例(写真)は、用紙の特性や表現の可能性を示すためのテストサンプルであり、特定の描画材の使用を薦めているものではありません。(一般的には適していないとされる描画材もあえて使用しています。)
参考文献
・「絵画(素材・技法)」武蔵野美術大学油絵学科研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「画材の博物誌」森田恒之/著 中央公論美術出版 1994年
・「水彩画 用具と描き方」武田信吾/著 美術出版社 1995年
・「デザイン 材料と表現」美術手帖増刊号編集部編/編 美術出版社 1982年
・「ドローイング」近藤達雄/著 美術出版社 2000年
参考ウェブサイト
・「2002-2006年 造形ファイル」 武蔵野美術大学
・株式会社ミューズ
監修
堀内貞明 通信教育課程油絵学科教授
作成日・改訂
2008年03月21日作成