クッサン くっさん
Coussin
クッサン(coussin:仏)は、木版画の木口木版や銅版画のエングレーヴィングにおいて、ビュランを使用して曲線を彫る際に、版を回転させて彫るために使われる版の下敷きとなるものです。
木口木版やエングレーヴィングおいてビュランを用いて曲線などを彫る場合、ビュランは一方方向にしか進めないために、ビュランを持った手を回転させて彫るのではなく、版そのものを回転させて彫る必要があります。そのために昔からヨーロッパではクッサンと呼ばれる道具が使われてきました。クッサンは楕円形の形をしており、外側は牛革で作られていて、中には砂が詰め込んであります。このためにクッサンは、サンドバッグやレザーパッドと呼ばれる場合もあります。またこのクッサンは、版を彫る際に下に敷いて使用するため、上から力がかかっても動かないようにある程度の重量があります。このクッサンの上に版をのせ、曲面をうまく利用すると版を回転させることが容易になります。使用の際にはこのクッサンの上に版を乗せて版を回転させながら、ビュランで彫り進めましょう。このクッサンと似たようなものに、彫刻刀を使用する板目木版で使用する回転式の作業板などがあります。この他の代用として、版の裏面にコインを貼ることで回転を容易にする方法もあります。ビュランを用いて正確な彫りを行うにはある程度の技術を必要とするため、練習をしてから彫りを行うと良いでしょう。
クッサンは非常に高価なこともあり、日本ではそれほど多く使用されていないのが現状です。クッサンは、版画材料を扱う画材店などで購入することができます。
関連科目
参考文献
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年
・「版画の技法と表現」町田市立国際版画美術館/編 1987年
監修
塙太久馬 通信教育課程油絵学科非常勤講師
作成日・改訂
2009年05月19日作成