キャンバス きゃんばす
Canvases
キャンバス(画布)は、亜麻などの繊維で織った布地の表面に下地処理を施した油彩画用の支持体です。また、この布を矩形の木枠に張り留めた状態(張りキャンバス)のものを指すこともあります。
キャンバスは、壁画や木板などの支持体に比べ、軽量で移動が容易なのが特徴です。布素材には、亜麻や木綿などの植物繊維と、ナイロンなどの化学繊維が利用されます。特に亜麻は丈夫で伸縮や油の影響が少なく、繊維に竹のような節目があり、織り糸が動かず下地塗料の定着も良いため、キャンバスに最適です。木綿は、亜麻布よりも安価で、滑らかな表面を持つ布に仕上がります。ただし、湿度による伸縮でたわみやすいので、油絵具での厚塗りには向きません。一方、化学繊維は水分による伸縮が少なく、アクリル絵具などの水性系の画材に適しています。これらの繊維は主に平織りと呼ばれる方法で織られ、その際に糸の太さや本数により織り目の大きさが異なるため、作品の絵肌などと深く関わってきます。一般的に織り目を区別する名称として、織り目の大きなものを「荒目」、細かいものを「細目」、その中間を「中目」と呼び、細目なものほど表面は平滑です。
布地をキャンバスとして利用する際は、基本的には下地処理が必要です(市販品の多くは下地処理済み)。下地処理は、布と絵具の油分が直接触れることでの酸化防止や織り目を固定させるために、膠などで目止め処理を行い、さらに絵具の発色や耐久性を高めるために地塗り塗料を塗布するなどの施しのことです。この時の地塗り塗料の性質により使用できる描画材や描き味などが異なります。白色顔料と乾性油を練った塗料では非吸収性の油性キャンバスになり、白色顔料と膠水などを練ったものは吸収性の水性キャンバスとなります。また、白色顔料と水性である膠水に乾性油を分散乳化させた乳濁液(エマルジョン)を練ったものは半吸収性となり、テンペラなどの混合技法に適しています。さらに白色顔料とアクリルエマルジョンを練ったものは半吸収性と同様の性質を持ち、アクリル絵具にも利用できます。
取り扱いの注意として、水性キャンバスに油絵具で描くことは可能ですが、油性キャンバスに水性であるアクリル絵具などを用いると剥離を起こす恐れがあります。また、キャンバスを木枠に張る場合は、使用する木枠サイズより張りしろ分大きいキャンバスを用意しましょう。
キャンバスは一般的な画材店で購入できます。
参考文献
・「絵画(素材・技法)」武蔵野美術大学油絵学科研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「画材の博物誌」森田恒之/著 中央公論美術出版 1994年
・「絵画材料事典」R・J・ゲッテンス・G・L・スタウト/著 森田恒之/訳 美術出版社 1999年
・「油絵 材料と表現」美術手帖増刊号編集部編/編 美術出版社 1984年
・「絵画技術全書」クルト・ヴェールテ/著 佐藤一郎/監 美術出版社 1994年
・「絵画表現のしくみ 技法と画材の小百科」美術出版社 2000年
参考ウェブサイト
・「2002-2006年 造形ファイル」 武蔵野美術大学
・フナオカキャンバス
監修
堀内貞明 通信教育課程油絵学科教授
作成日・改訂
2008年12月19日作成