カーボン紙 かーぼんし
Carbon Paper
カーボン紙は、着色剤を油や蝋(ろう)などと混ぜて練り、薄い紙(カーボン原紙)に塗布したもので、文字や図などを転写する際に用いる紙です。一般的には事務書類や伝票などの転写などに用いられますが、版画や絵画制作の際に、あらかじめ描いた下絵や図版を版や支持体に転写する場合などに使用します。
基本的な使用方法は、転写先(版や支持体)の面上に、カーボン紙の着色剤が塗布されている面を向けて被せ、さらに転写したい下絵が描かれた紙を重ねます。次にボールペンや鉛筆などで下絵の図柄に沿ってトレースしていき、ペン先の圧力でカーボン紙が転写先に押し当てられ、着色剤が付着し転写されます。この時に赤などの色付きボールペンを用いる事で、トレースした線が確認しやすくなります。
カーボン紙の着色剤には、黒・赤・青などの色があり、黒はカーボンブラックなどの顔料、赤や青は油溶性の染料が使われています。また、塗布面の異なる片面カーボン紙、両面カーボン紙などがあります。ちなみに、カーボン紙と同様の役割をするものとして、「念紙(ねんし)」と呼ばれる、木炭や水干絵具、弁柄など油脂分を含まない着色料を和紙に定着させたものもあります。
カーボン紙は、19世紀初頭のイギリスで誕生しました。当時のカーボン紙は、煤(すす)に豚の脂を混ぜて紙に塗ったものでした。日本では、明治時代に、輸入品のカーボン紙が「炭酸紙」として利用されていたようで、国産品としては、煤を油で溶いて和紙に塗ったものも登場しています。近年カーボン紙は、コピー機の普及にともない使用する機会が減っているものの、手軽に複写できるものとして現在も広く用いられています。
カーボン紙は画材店や文房具店で購入できます。
参考文献
・「版画」武蔵野美術大学版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「おもしろい紙の話」小宮英俊/著 日刊工業新聞社 1990年
・「世界大百科辞典」平凡社 1988年
・「ブリタニカ国際大百科事典」ティビーエス・ブリタニカ 1995年
・「紙パルプ事典」紙パルプ技術協会/編 金原出版 1989年
参考ウェブサイト
・ゼネラルサプライ株式会社
監修
永井研治 通信教育課程油絵学科教授
作成日・改訂
2008年04月18日作成