平版用ラッカー へいはんようらっかー

Planographic Lacquer

平版用ラッカーは、金属版によるリトグラフの製版時に描画部を補強する工程に使用するピンク色をした揮発性の有機溶剤です。

アルミ版などの金属版は石版石に比べ、脂肪分に対する感度が低いために、平版用ラッカーを塗布することにより、薄い樹脂層を形成することで描画部を補強し、細かい描画線などを製版液やエッチ液の酸の作用から守ることができます。主にチンクターによる版の補強(チンクター返し)とセットにして行われる場合が多いです。

平版用ラッカーは、描画後に製版液を塗布し、プリントクリーナーで描画部を洗い落とした版に使用します。版面にラッカーを適量たらし、ウエスで画面全体に均一に薄く塗布します。平版用ラッカーは揮発性の高い溶剤なので、すばやく作業しなければなりません。ラッカーが完全に乾いた後にチンクターを塗布すると、描画した部分にはラッカーとチンクターの層ができ、補強された版面が作り出されます。平版用ラッカーはプリントクリーナーやテレピンでは落ちることはないので、描画部分がピンク色に残っていることを確認することができます。ラッカーを落とす場合には、シンナーを使用し溶解することが可能です。

平版用ラッカーは揮発性の高い有機溶剤なので、使用する場合には、必ず換気のできる、火気のない所で扱うようにしましょう。
平版用ラッカーとして市販されている主な製品は、エゲンラッカー(エゲン社)やディープエッチラッカー(パシフィック化学)があります。
リトグラフ用品を扱う専門店で購入できます。

テキストを全て表示

関連科目

参考文献
・「版画」武蔵野美術大学版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画の技法と表現 改訂版」町田市立国際版画美術館 2003年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年

参考ウェブサイト
「2002-2006年 造形ファイル」 武蔵野美術大学

監修
永井研治 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2007年09月10日作成