腐蝕液 ふしょくえき

Mordant

腐蝕液は、間接凹版技法(腐蝕法)で凹部の製版に用いる、金属を腐蝕する性質を持つ液体です。一般的には塩化第二鉄水溶液や硝酸水溶液があります。

塩化第二鉄水溶液は、腐蝕液として広く一般的に使用されている黄褐色の液体です。腐蝕する際には、のり付きパネルなどを小さく裁断して台(ゲタ)とし、描画面を下に向けて浸します。これは、腐蝕の際に化合物(腐蝕カス)が発生し凹部に溜まり腐蝕進行の妨げになるのを防ぐためです。下を向けることで腐蝕カスは凹部に留まらずに落下します。腐蝕が終わったら、版に付いた腐蝕液を水洗いします。また、醤油をかけて中和させ、酸化を停止することもできます。塩化第二鉄水溶液は、描線を垂直にシャープに腐蝕するのが特徴です。

硝酸水溶液は、古くから使用されている代表的な腐蝕液です。無色透明な液体で、銅を腐蝕するとしだいに青く変化します。使用する際は樹脂製のバットに水を入れた後に、硝酸液を加えて希硝酸水溶液にします。この時、水と硝酸を加える順番を間違えると発熱を伴い危険です。腐蝕の際は、描画面が上を向くように浸します。腐蝕される凹部から発生する気泡が版面の腐蝕を妨げるため、鳥の羽や柔らかい布で、版面を優しく撫でるようにして気泡を取り除く必要があります。硝酸水溶液は描線を垂直に腐蝕し同時に水平にえぐるように腐蝕する特徴があります。
この他の腐蝕液では、塩酸を使ったオランダ腐蝕液などがあります。
腐蝕液は、人体に有害でまた環境への影響があるために取り扱いには十分な配慮が必要です。どちらの腐蝕液も、樹脂製のバットに入れて使用して、一つの液に違う種類の金属を入れないようにし、液体が直接人体に触れないようゴム手袋を着用しましょう。特に硝酸水溶液を取り扱う場合、有毒なガスが発生するため、換気を必ず行い、防毒マスクを着用して吸引しないようにします。
腐蝕液を処理する場合には、消石灰やアンモニアなどで中和して廃棄するか、廃棄物取扱業者に処理を委託しましょう。塩化第二鉄水溶液は、版画用品を扱う画材屋や薬局、硝酸液は薬局などで購入できます。

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参考文献
・「事典プリンツ21」 室伏哲郎 著 プリンツ21 1997年
・「版画事典」室伏哲郎 著 東京書籍 1985年
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室 編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「銅版画の技法」 菅野陽 著 美術出版社 1962年
・「銅版画のテクニック」 深澤幸雄 著 ダヴィッド社 1966年
・「銅版画のマチエール」 駒井哲郎 著 美術出版社 1992年

監修
今井庸介 通信教育課程油絵学科非常勤講師

作成日・改訂
2008年09月19日作成

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  • 腐蝕液(塩化第二鉄溶液)腐蝕液(塩化第二鉄溶液)
  • 塩化第二鉄溶液による版の腐蝕塩化第二鉄溶液による版の腐蝕
  • 硝酸水溶液による版の腐蝕硝酸水溶液による版の腐蝕

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