油壺 あぶらつぼ

Oil Dipper

油壺(あぶらつぼ)は、油彩画の制作の際に利用する画溶液を入れておくための小さな容器です。

油彩画の制作では、絵具のノビや艶の調整に、乾性油や揮発性油などの画溶液をよく利用することから、パレット上の絵具と同様に、溶き油もすぐに使用できるように手元にあると、効率良く制作できます。そこで、パレットの隅に油壺と呼ばれる小さく軽量な容器を裏側のクリップで挟んで装着することで、携帯性や絵具との混合も容易にしています。油壺にはフタがあり、しっかり密閉することで画溶液の保存が可能です。(長期間の保存はお奨めしません。)油壺の形状としては、傾けてもこぼれにくいそろばん型や、使用後の掃除が容易な筒型などがあります。また、それぞれの形状には、サイズの異なるものや、2つの壺が組み合わさっているものなどがあります。容器の素材は、真鍮やアルミなどの金属製のものが主ですが、廉価版のプラスチック製のものもあります。

油壺に入れる画溶液の分量は、容器の半分程度を目安にしましょう。あまり多く入れてしまうと、パレットを傾けた時にこぼれる原因になります。油壺内の画溶液の種類は、油彩画制作の下書きの段階ではテレピンなどの揮発性油のみですが、描画の際は揮発性油と乾性油を壺内で配合し用います。ちなみに配合比は、完成に近づくにつれ乾性油の割合を増やしていきます。一般的な使用例としては、パレット上に描画に必要な量の油絵具を出しておき、筆先を油壺内に浸けて適量の画溶液を含ませた後、絵具に加えて混ぜます。この時、一度に多量の画溶液を加えるのではなく、少量ずつ徐々に加えましょう。

使用上の注意として、壺内の画溶液が、絵具などで濁ってきたら早めに交換しましょう。また、制作後に残った画溶液は、基本的にはその日の内に使い切るか破棄し、容器内をしっかり清掃します。次回制作時はあらためて新鮮な画溶液を入れて描き進めるように心がけましょう。特に揮発性油と乾性油を混合した場合は、時間の経過とともに混合比が変化してしまいます。しかし、どうしても残った画溶液を1~3日ぐらい保管したい場合は、容器の口の周りを布などでよく拭いて、フタをしっかり閉めておきましょう。油壺の周囲に付着した絵具は、少量の揮発性油やストリッパーを含ませた布などで擦ることで綺麗に拭き取ることができます。
油壺は、一般的な画材店で購入できます。

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参考文献
・「絵画材料事典」R・J・ゲッテンス・G・L・スタウト/著 森田恒之/訳 美術出版社 1999年
・「絵画表現のしくみ 技法と画材の小百科」美術出版社 2000年
・「油絵のマティエール」岡鹿之助/著 美術出版社 1954年

監修
堀内貞明 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2008年12月08日作成

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  • 写真左:そろばん型 写真右:筒型写真左:そろばん型 写真右:筒型
  • 写真左:二連の油壷 写真右:プラスチック製写真左:二連の油壷 写真右:プラスチック製
  • 写真1.油壷のパレットへの装着例写真1.油壷のパレットへの装着例
  • 写真2.油壷の裏面にあるクリップで留める写真2.油壷の裏面にあるクリップで留める

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