楮紙 こうぞし

Kōzoshi (Japanese Mulberry Paper)

楮紙は、原料に楮を用い、強靭でありながら軽くてしなやかな紙質を持った手漉き和紙です。日本画制作における支持体や裏打ち紙、木版の版画用紙などの絵画材料から、日常の暮らしに関わる材料として障子紙や写経用紙、表具の裏打ち、照明などまで幅広く利用されている紙で、それぞれに適した特性の楮紙が各地域で様々な製法により作られています。

楮紙の原料である楮は、桑科の落葉低木で比較的栽培しやすく、毎年切り株から生える枝の靭皮繊維(茎の周辺部分の繊維)を使用しています。楮の繊維は10~15mmほどで、他の和紙に用いられる雁皮(がんぴ)や三椏(みつまた)などの原料繊維に比べ太くて長く、繊維同士の絡みがよいため、出来上がる紙は破れにくくとても強度があります。楮の産地としては、栃木の那須楮、高知の土佐楮などが有名で品質も良いとされていますが、近年は外国産の楮も多く輸入されています。
代表的な楮紙としては、石州紙(島根県)、奉書紙(福井県)、細川紙(埼玉県)、程村紙(栃木県)、本美濃紙・薄美濃紙(岐阜県)、西ノ内紙(茨城県)、美栖紙(奈良県)などがあります。

取り扱いの注意として、紙の裏表は、紙肌が滑らかな面が表側で、ザラつきのある面が裏側になります。木版画で使用する場合には、印刷する前に湿らせたボール紙や新聞紙に紙を挟み込み、適度に湿らせることが必要です。楮紙各種は画材店や和紙の専門店で購入できます。

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参考文献
・「日本画 表現と技法」武蔵野美術大学日本画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画」武蔵野美術大学版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「紙の大百科」美術出版社 2001年
・「美濃紙の伝統」久米康生/著 美濃市役所/編 美濃市役所 1994年
・「美濃紙マニュアル vol.3 美濃紙入門」美濃紙を愛する会 2004年
・「日本画用語辞典」東京藝術大学大学院文化財保存学日本画研究室/編 東京美術 2007年

参考ウェブサイト
全国手漉き和紙連合会
造形ファイル特集サイト「美濃紙の里をたずねて」

監修
重政啓治 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2008年09月10日作成

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  • 本美濃紙 並口における描画例

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