ポピーオイル ぽぴーおいる

Poppy seed oil

ポピーオイル(Poppy-Seed Oil:英)は油彩画の制作において、油絵具の固着力を高め、粘性や濃度の調節、艶出しなどを行う際に用いる画溶液(溶き油)です。また、油絵具の中に、顔料を画面に固着させる成分(主媒材)として練り込まれています。

油彩画の画溶液は、主に揮発性油と乾性油の2種類の性質があり、このポピーオイルは乾性油に分類され、成分中の不飽和脂肪酸が酸素と酸化重合することで固まるという性質を持っています。内容成分は、芥子(けし)の種子から搾油・精製したリノール酸を多く含む植物性乾性油で、リンシードオイル(原料:亜麻の種子)に比べ、乾燥がやや遅くなります。ただし、黄変が起きにくいため、白や淡色の絵具に混ぜる際には適しています。また、乾きが早く、光沢・透明性が増し、丈夫な塗膜を形成する「サンブリーチド(又はサンシックンド) ポピーオイル」と呼ばれる日光に長時間晒した加工油もあります。

一般的な使用方法は、油壺などの容器にポピーオイルと適量のテレピンなどの揮発性油で希釈した溶剤を入れ、必要に応じ筆先に溶液を含ませ、その筆先で油絵具と絡ませて適度な粘性や濃度に調節した後、画面に描いていきます。溶液の分量は、描き始めは揮発性油の量を多く乾性油を少なめにし、仕上げに向けて徐々に乾性油の割合を増やして使います。
使用する際は、換気を良くし高温や火気のある場所は避けましょう。
ポピーオイルは、一般的な画材店で購入できます。

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参考文献
・「絵具の辞典」ホルベイン工業技術部/編 中央公論美術出版 1996年
・「絵具の科学」ホルベイン工業技術部/編 中央公論美術出版 1994年
・「画材の博物誌」森田恒之/著 中央公論美術出版 1994年
・「絵画表現のしくみ 技法と画材の小百科」美術出版社 2000年
・「絵画技術全書」クルト・ヴェールテ/著 佐藤一郎/監 美術出版社 1994年
・「ホルベイン画溶液解説書」ホルベイン工業株式会社 2001年

監修
堀内貞明 通信教育課程油絵学科教授
島眞一  通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2007年10月12日作成