コンテ こんて

Conté Crayons

コンテは、天然顔料を粉末状にし、棒状に固めるなどの加工をした描画材で、別名カーボンチョークとも呼びます。材質の硬度が鉛筆と木炭の中間程度で、柔らかさと硬さを合わせ持っているため、多様な描線が引け、主にデッサンやクロッキーに利用されています。

コンテの形状は、長さが約6.5cm位の棒状の角柱型や円柱型が一般的ですが、木材の軸に納めた鉛筆型もあります。基本色は白、黒、赤褐色ですが、メーカーにより茶や灰色、その他に様々な色のものがあります。コンテは、酸化鉄やカーボンブラック、酸化チタンなどの天然顔料を、粉末状にして精製し、それに粘土や固着材のセルロースなどを加え、棒状に押し固めて成型した後、焼成されてできています。そのため、色材には、オイルパステルのような油分や定着成分は含まれず、粉っぽい粒子状の描線になります。コンテの基本的な製法を開発したのが、鉛筆の発明でも知られるフランスのニコラ・ジャック・コンテ(1755~1805)で、その後、コンテ社を設立し「コンテクレヨン」として販売することで世間に広まり、この名が定着しました。

描画の際は、コンテ全体が色材であるため、先端や側面などのあらゆる部分を利用することができます。基本的には、先端の角部分や鋭利に削るなどして線描をしますが、コンテを横に寝かせて側面部分を使うことで、幅のある面的な塗りができます。また、角柱型のコンテの場合、側面のエッジを利用することで、直線的なシャープな線描や、線と面的効果を組み合わせた描線を引くことができます。さらに、描いた部分は色材が粒子状になり定着力も弱いため、指やガーゼを使って、ぼかしや淡い調子などを作ることもできます。コンテ各色を用いて描く場合は、色の付いた紙を用いることで中間の調子とし、陰影部分を黒や褐色系で描き、明部に白を用いて描画していきます。この方法により豊かな立体表現が可能で、レオナルド・ダ・ビンチなど、多くの作家による優れたデッサンが残されています。

使用上の注意として、コンテには色材を支持体に定着させる成分が含まれていないため、描画部分の色材が非常に取れ易い状態になっています。そのため、完成後はフィクサチーフをかけてしっかり定着させましょう。また、額装の際は、アクリル板でなくガラスのものを使用しましょう。静電気により色材が剥がれてしまう恐れがあります。
コンテは、画材店や文具店で購入できます。

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参考文献
・「画材の博物誌」森田恒之著 中央公論美術出版
・「絵画技術全書」クルト・ヴェールテ著 美術出版社
・「図画工作・美術科 重要用語300の基礎知識」若元澄男/編著 明治図書 2000年
・「絵画表現のしくみ 技法と画材の小百科」美術出版社 2000年
・「絵画材料事典」R・J・ゲッテンス・G・L・スタウト/著 森田恒之/訳 美術出版社 1999年
・「日本大百科全書」小学館 1994年
・「絵画の教科書」谷川渥/監 小澤基弘・渡邊晃一/編 日本文教出版 2001年
・「画材と素材の引き出し博物館」目黒美術館/編 中央公論美術出版 1995年
・「岩波西洋美術用語辞典」岩波書店 2005年

参考ウェブサイト
コンテ社

監修
堀内貞明 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2009年04月21日作成

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  • 角柱型コンテ角柱型コンテ
  • 様々な色のコンテ様々な色のコンテ
  • 鉛筆型コンテ鉛筆型コンテ
  • 使用例(キャンソン ミ・タント)細い線を引く細い線を引く
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  • シャープな線を引くシャープな線を引く
  • 面を塗る面を塗る
  • コンテ黒のみによる描画例(ミ・タント)
  • コンテ黒・茶・白による描画例(ミ・タント)
  • コンテ黒・白による描画例 ※紙の色(ミ・タント 赤茶系)を中間色として

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