やわら やわら

Yawara

やわらは、木版画において板目木版の摺りの際、版が動かないようにするために版の下に敷く、湿らせた綿布(ウエス)などのことをいいます。

板目木版の摺りでは、ブラシを使って版に絵具を乗せる際やバレンで紙の上から版を強く擦る際などに、版に強い力が加わります。これらの作業をする際には、版を動かないようにするため、やわらを使う必要があります。やわらは20cm角程度に切ったメリヤス地のウエスを水で湿し、4つに折り畳んだものです。これを版木の4つ角に敷いて使います。
このやわらの上に版木を置いて作業をすると、摺りなどの際に力を加えても版木が動くことなく作業することが可能です。また、やわらを敷くことによって、裏に彫った版面に傷がつく心配もなくなります。しかし、やわらを厚くしすぎると、版と作業台の間に空間ができてしまい版木に弾力が生じてバレン圧がうまくかからなかったり、作業を行っているうちに版木が反ってしまったりする原因となるために注意した方が良いでしょう。版が大きい場合には、版に合わせて大きい面積のやわらを作るようします。外見当で摺りを行う場合には、版木の下に敷いたやわらによって、見当板との厚さが多少違ってくるために、紙を置く際には注意が必要です。

やわらはウエス以外のものでも代用が可能です。新聞紙を用いる場合、新聞紙はムラなく湿し、折り畳んで使用します。大きめの雑巾を使用する場合には広げて版の下に敷いて使います。またペーパータオルもウエスと同様にして使用することができます。さらに最近では、塩化ビニールでできた滑り止めマットなどが用いられることもあります。

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参考文献
・「版画」武蔵野美術大学油絵学科版画研究室/編 武蔵野美術大学出版局 2002年
・「版画事典」室伏哲郎/著 東京書籍 1985年

監修
塙太久馬 通信教育課程油絵学科非常勤講師

作成日・改訂
2008年11月25日作成