烏口 からすぐち

Ruling Pen

烏口(からすぐち)は、製図やトレース、レタリングなどに用いられる、均一な太さの線をひくための描画用具です。名前のとおり、カラスのくちばしの様な形をしており、2枚の金属製の刃の間にインクを注入して使用します。この刃の隙間に、毛細管現象によってインクが含まれる構造になっています。インクを注入する際は、烏口を直にインク壷や皿に入れるのではなく、例えばインクを含ませた細い筆や、スポイトなどを烏口の刃の内側に軽くあてるなどします。

烏口には、刃の隙間の幅を締めたり、広げるためのネジが付いています。2枚の刃の間隔を調節することで、描こうとする線の太さを自由に変えることができます。線幅が一本ごとに決まっている製図ペンとは、この点で大きく違っています。また、水で溶いた絵の具やポスターカラーなどもインクと同様に使用できるので、烏口が一本あれば、線幅だけでなく、さまざまな色の線を描くことができます。うまく使えるようになるまでは、熟練が必要といわれていますが、慣れると、非常にシャープで美しい線がひけるようになります。

烏口の種類には、英式と独式があります。2枚の刃先が、縦に開くものが英式、横に開くものが独式です。直線を描くための直線烏口の他、曲線用の回転烏口、2本の平行した曲線の描ける双頭回転烏口があります。円を描く時はコンパスになっているものを使用します。

使い方は、定規に軽くあて、烏口を垂直に保ち、筆圧を入れずに一定のスピードで線をひきます。刃先が定規に触れると、線がにじんでしまうので、定規の目盛の付いている傾斜した側を裏返しにして使用すると良いでしょう。刃先が錆(さ)びたり、汚れが付いてしまうと、きれいな線が描けなくなってしまうので、使用後はよくインクを拭き取った後、ネジを調節して刃先を少し開いた状態で保管しましょう。また、刃先が摩滅した場合は、オイルストーンという烏口専用の砥石に機械油を数滴落として研ぎ、刃先を整えることができます。烏口は、画材店やデザイン用品店で入手することができます。

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参考文献
・「だれにでもわかる 製図用具の正しい使い方」 工藤竹美/著 工芸調査会 1982
・「デザイン 材料と表現」 美術手帖増刊号編集部/編 美術出版社 1982
・「ドローイング・モデリング」横溝健志 小石新八/編 武蔵野美術大学出版局 2002

監修
小石新八 通信教育課程工芸工業デザイン学科教授

作成日・改訂
2008年03月21日作成

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  • 刃を開いたところ(左:英式 右:独式)刃を開いたところ(左:英式 右:独式)
  • インクの注入インクの注入
  • 線を引くところ線を引くところ

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