水彩紙 すいさいし

Watercolor Paper

水彩紙とは、透明水彩や不透明水彩などの水性絵具を用いた描画に適した専用紙の総称です。

水彩画は、水・絵具・支持体(紙など)の素材同士が密接に影響し合うことで表現が成り立っているため、紙自体が持つ吸水性・紙肌(表面の凹凸)・発色・堅牢性・保存性などの特性や条件が大変重要になります。
吸水性とは、紙に浸透する水分量のことで、この量が、水彩絵具の作る独特なにじみやぼかし効果に大きな影響を与えます。これには紙の厚さや繊維密度とともにサイジングと呼ばれるにじみ止め処理などが大きく関係しています。紙肌については、紙面の凹凸の大きさや深さにより、凸部のみに着色したり、凹部に溜まる絵具量の違いから微妙な調子の変化を作ったり、平滑なものはムラ無く塗れるなど様々な描画効果を作り出すことができます。また、凹凸の大きな紙ほど、水分に対する許容があり、絵具が流れ落ちず紙面上に留まりやすくなります。発色に際しては、紙自体が持っている色味や原料成分が大きく起因しますが、前述したサイジングや紙肌による効果も関係があり、強めのサイジングや表面の凹凸が大きいものなどは、比較的発色が良くなります。その他に水彩紙の条件として、重ね塗りを繰り返しても紙面の荒れや毛羽立ち、シワや波打ちが出ないような堅牢性、経年劣化にも耐えられるように紙の酸度が中性であること、などが重要になります。

水彩紙は主に綿、木材、亜麻などを原料に作られ、抄紙方法は、現在では手漉きのものは少なく、機械漉きが多くを占めますが、モールドメイドと呼ばれる半機械漉きにより手漉きに近い風合いの紙を作る製法もあります。そのため、モールドメイドかつ綿100%の水彩紙は高級品とされています。
代表的な水彩紙としては、アルシュ水彩紙(仏製)、ファブリアーノ水彩紙(伊製)、ワットマン(英製/現在は廃版)、ウォーターフォード(英製)、MO紙(手漉き・日本製)、ワトソン紙(日本製)、マーメイド(日本製)などがあり、この他にも様々な特徴を持つ紙が各メーカーより製造されています。(製品名は2008年時点のものです)

取り扱いの注意として、水分を多量に用いて描く場合は、厚めの紙を使用するか、あらかじめパネル等に水張りしてから描きましょう。また、サイジングの効きが強い紙の場合は、水を含ませた刷毛などで紙の表面を何度か水引きした後、乾燥させることで吸水性を調整することができます。
水彩紙各種は、一般的な画材店などで購入できます。

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参考文献
・「水彩画 材料と表現」美術手帖増刊号編集部編/編 美術出版社 1983年
・「デザイン 材料と表現」美術手帖増刊号編集部編/編 美術出版社 1982年
・「絵画表現のしくみ 技法と画材の小百科」美術出版社 2000年
・「水彩画 用具と描き方」武田信吾/著 美術出版社 1995年
・「画材の博物誌」森田恒之/著 中央公論美術出版 1994年

参考ウェブサイト
「2002-2006年 造形ファイル」 武蔵野美術大学
株式会社ミューズ
マルマン株式会社
ホルベイン画材株式会社
アルジョウィギンス社

協力
・株式会社ミューズ

監修
堀内貞明 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2008年07月18日作成