木炭紙 もくたんし

Charcoal Paper

木炭紙は、主に木炭などの定着性の弱い描画材に適した紙で、紙の表面には規則的に並んだ筋状の凹凸加工が施され、色材(木炭の粉など)の定着を良くするとともに、描き方の工夫で豊かな表現が可能です。

描画の際に生み出される繊細な調子や濃淡などは、木炭紙特有の柔らかな風合と紙肌によるもので、基本的には紙を傷めないように描き進めるのが大切です。筆圧を抑えるクッションとして、必ず4~5枚程度の木炭紙を下に敷きましょう。塗り重ねる際は、一度塗った木炭を布や指の腹などで軽く押さえ馴らしてから(紙肌の凹部に入れ込むイメージ)、再度塗ることで濃度を上げていきます。また、描画した線などを消すときには、練りゴムや指で強く擦りすぎると表面の凹凸が潰れてしまうため、食パンや柔らかい布を使用しましょう。

市販されている木炭紙には数種類あります。もっとも多く利用されている「MBM木炭紙」は、フランスのキャンソン社が製造している「MBMスリースター」という日本向けの独自商品で、その名のとおり“☆☆☆”のウォーターマーク(透かし)が入った最高級木炭紙です。コットン(75%)とセルロースを原料とした保存性の高い中性紙で、種類としては、一般的に木炭紙サイズと呼ばれる500mm×650mmで、厚さ(1平方メートルあたりの紙一枚の重量)は105gと130gの2種類のものと、その倍の大きさがある650mm×1000mm(130gのみ)のものがあります。
「キャンソン木炭紙」は、同様にキャンソン社による紙で、コットン(60%)とセルロースを原料とした中性紙です。紙色は着色により純白に近い色で作られています。(元々は同社の「Ingres Vidalon」というカラーペーパーで、12色中の白色のもの)サイズは500mm×650mmで、100gと125gの2種類の厚さがあります。ちなみに、キャンソン社製木炭紙は、他にも廉価版の「Ingres Ecoles」など数種類あります。
「アトリエ」は、日本の製紙メーカーであるミューズが製造している国産の木炭紙です。ウッドパルプ(100%)を原料とした中性紙で、紙色は薄いクリーム色をしていて、サイズ・厚さは、500mm×650mm(107g)の1種類です。

使用上の注意として、描く前に紙の裏表を確認しましょう。紙肌の凹凸がハッキリしている面が表側ですが、ウォーターマークの文字の向きでも確認できます。(「MBM」や「ATELIER」が正しく読める向きが表側です。)また、描画後は色材が取れやすいのでフィクサチーフでしっかり定着させましょう。
木炭紙は、画材店などで購入できます。

※描画例(写真)は、用紙の特性や表現の可能性を示すためのテストサンプルであり、特定の描画材の使用を薦めているものではありません。(一般的には適していないとされる描画材もあえて使用しています。)

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参考文献
・「画材の博物誌」森田恒之/著 中央公論美術出版 1994年

参考ウェブサイト
「2002-2006年 造形ファイル」 武蔵野美術大学
キャンソン社
マルマン株式会社
株式会社ミューズ

協力
・マルマン株式会社
・株式会社ミューズ

監修
堀内貞明 通信教育課程油絵学科教授

作成日・改訂
2008年04月25日作成

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  • 木炭紙(拡大写真)木炭紙(拡大写真)
  • MBM木炭紙 厚口における描画例
  • 木炭による描画例(MBM木炭紙 厚口)
  • ウォーターマーク(透かし)ウォーターマーク(透かし)

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